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黒板用のデカい分度器携えて、クラスの皆の足元に這いつくばっては分度器で何やら測って周って、女子たちなんかはスカートの中覗かれたって、きゃあきゃあ騒いで、変態呼ばわりされて、箒でバシバシ叩かれて、それでも当人は、変態?誰の事?みたいなキョトン顔していたし、またある日には、校庭の至る所で苗木の下を──どこから持ち出したのか事務室の備品だと思う──スコップで掘り返して周っては穴ボコだらけにして、(また同じように分度器持ってたし。確か小四の、当時付いたあだ名が『変態分度マン』そのまんまやん!)
それに気づいた武藤先生と担任の中瀬先生に両サイドの腕ガッツり抱えられてヒョロっヒョロの体がひょいと持ち上げられて、まるで囚われの宇宙人みたいに職員室へ連行されて行くのを教室の窓から皆で見ながら、ああ、またかって呆れて、自習モード突入で何故だか皆やっほい浮かれてテンション上がって、案の定やっぱりその授業は自習になって、その間ずっと千田君は職員室で説教されてた。なんて事もあった。
そんな千田君の事を憎めなくて、むしろ面白いなって感じてるのは私だけじゃなかったはずで、周りの生徒の何人かは、今度は何をしでかすんだろう?と期待してる子も結構いたと思う。
ドン引きとまでは言わないけれど、引いて見ちゃってるから、自分も同じ目で見られちゃうかもって考えて、友達として付き合うのを立候補する男子は一人もいなかったし、それと同時に本人も作ろうという気が無さそうだったから、ホント謎多き少年で、本人の意に介さず孤高な変人としてウチの学校ではけっこう名前が売れてしまっていた。
でもそれも、思春期ってヤツが始まる小五になった頃までの話……
千田君以外はガラッと人が変わって急に色気づいたりするもんだから、気になる異性の子を意識しだして、色目使ったり、前髪いじりだしてみたり、色恋沙汰の方が面白くって、訳分からん変わった事する千田君は蚊帳の外で、次第に彼の事は話題に登らなくなっていった。
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