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無駄な時間と良い時間
冷たい風が街に吹きすさびます。単調な革靴の音、規則的なハイヒールの音が重なって大通りに響いていました。
煙草屋ではいつものようにキエザがBLW/553/Cの煙草を巻いています。
「ブルーさんは本当に時間をケチるわね。貧乏性は損よ?」
「あなたたちが時間を無駄にしているのです。溢れるほどの時間を受け取っておきながら、それを少しも大切にしない」
「そういうものかしら」
「そういうものです」
「すべてが無駄とは思わないけどね。私には散歩も手紙を書く時間も大事だわ」
「まったく、理解し難い。無駄な時間は削るべきです」
「こうして話している時間も?」
「もちろん。時間は有限なのですから、一分でも節約しなければ」
「……ふーん」
キエザはにやにやと笑います。
「…………?」
「はい、煙草が巻けたわ。また明日も来てね」
「ええ、また明日」
そう言って、BLW/553/Cは店を後にします。
「……19時02分。3分はとっくに過ぎてるんだけどね」
BLWの背中を見送りながら、キエザは時計を見上げて小さく呟きました。
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