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クリスマスとプレゼント
クリスマスが近づいて、街は煌びやかに照らされています。街を歩く人々がブティックの豪奢な品物に足を止めるのを横目に、灰色の男は煙草屋に足を運んでいました。
「女性に向けたプレゼントというのは、何が良いものでしょうか」
「………………なんて?」
BLW/553/Cの思いもよらない言葉に、思わずキエザは聞き返しました。
「プレゼントです」
「ごめん、聞き間違いじゃなければ今……ぷれぜんとって」
「ええ。ですから女性へのプレゼントです。」
キエザは思案し、少し寂しそうな顔を見せ、そうしたかと思うと何かに気付いたらしく笑顔になりました。
「ふ、ふーん。私なら花が嬉しいかな。あなたの名前と掛詞で、”青い花”なんて良いんじゃない?」
「あなたの好みではなく、一般論としての女性の好みについてです」
「あ、あー……。うん。それならハンカチとかバスボムとか? 重すぎるとあんまり良くないしね。」
「なるほ――」
「で、どんな子なの? 朴念仁のあんたが女の子にプレゼントをあげようなんて成長したものね。育てた私も鼻が高いわ」
相手の言葉も最後まで聞かず、キエザは何かを誤魔化すようにまくしたてました。
BLW/553/Cはそんなことは意にも介さず、質問に淡々と答えます。
「10歳くらいの女の子です」
キエザは額に手を当てて、数秒のあいだ固まりました。
「前言撤回。今言ったこと全部忘れなさい」
「はい」
素直に頷くBLW/553/Cを、キエザが睨みます。
「最初からそれを言ってれば話が早いのよ。今ので軽く3分ロスしてるんだけど?」
「理不尽な怒りをぶつけられているような気がします」
「気のせいよ」
気を取り直して、BLW/553/Cは改めて相談します。
「とにかく、我々の言う事をなかなか聞かないその子を手懐けるために、良いプレゼントがないか考えているのです」
「ああ、機嫌を取りたいのね。それならベタだけど人形とか。可愛いのがいいわね」
「可愛いらしい人形ですか。ふむ、手配してみます」
そうして、その日の3分間は終わりました。
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