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――翌日。
「用意してきました。」
「早いわね。見せてみて。」
BLW/553/Cが取り出したのは、可愛らしい人形。茶色の短髪にそばかす。どこかキエザに似ているような、そんな気がしました。
『まったく、プレゼントを他の女にチェックしてもらうだなんて、女心が分かってないわね。これだから銀行員は』
人形は、ひとりでに話し始めます。
「……これ、誰かに似てない?」
『もう少しハッキリ言わないと伝わらないわよ。35点ね』
「……喧嘩売ってるの?」
「駄目ですか」
「あんたの目には私はこう見えてるのね、よく分かったわ」
「……もしかして怒っていますか?」
「いいえ、全然!」
キエザは笑って答えました。――声は笑っていませんでしたが。
当然BLW/553/Cはそんな繊細な感覚は持ち合わせていませんので、言葉どおりに受けとります。
「良かった。それではこの人形を――」
「やめなさい」
キエザに止められ、仕方なくBLW/553/Cはもう一つの人形を取り出しました。
「次善案のこの『完全無欠のビビガール』はどうでしょう」
「実にセンスがない……けど、いくらかマシね。60点」
「完全無欠なのに、ですか」
「そう。完全無欠なのに、60点」
そう言って、キエザは笑います。
キエザが笑うのを見て、BLW/553/Cにはこの人形が先程までよりもずっと良いものに思えてきました。人形は少しも変わっていないのに、です。
「この人形にします」
「いいんじゃない? オプションパーツが多いから、とてもお金がかかりそうな人形だけど」
「心配いりません。その子には、欲しいものを手に入れるために働くことを覚えて欲しいのです」
「子供のうちから金銭感覚を育てる計画ね。朴念仁も、たまには良いことを考えるじゃない」
『好意を示すなら、もっとストレートに表現すべきよ。65点』
ぽかっ。キエザがBLW/553/Cの頭を殴りました。
「なぜ私が殴られるんでしょうか?」
「あんたの人形でしょ」
「いえ、せっかくですからあなたに差し上げようかと――」
「持って帰れ」
「はい……」
人形を持ってすごすご帰っていくBLW/553/Cの背中を眺めながら、キエザは呟きます。
「まったく、あの馬鹿……。チェックして良かった。なんであんな人形を持ってきたんだか。”可愛い人形”を持ってこいって言ったのに――」
気付いたキエザは顔を赤らめ、目をぱちくりとさせました。
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