魔王だって思い出に笑う

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 事の発端は俺の従者が昨夜、ガルが所望した酒を取りに城の地下の貯蔵庫へ行ったことだった。  ―――いや、この従者もな、どうかとは思うんだ。  ガルが勝手に俺の爪を使って、俺の血とガルの血を混ぜて作ったって言うんだけど、なに勝手に血とか取ってんの?・・・てか爪って何。俺ここに来てから爪切ってないんだけど。  あ、いやそれはどうでもいいんだ、今は。  昨夜、昨夜が問題なんだ。  その従者(名前はセイロという。さっき知ったんだけど。『シルベールから取ったんだよ』と魔族ガルデリカが言っていたけど、俺の名前のどこをどう取ったらそうなる?)が魔王の側近の部屋の前を通った時に子どものあられもない声を聞いたとか聞かなかったとか。  そんな報告をしてくるもんだから問い詰めているところだ。  よくもまぁ出るわ出るわ、言い訳の数々。 「何が稚児趣味は無いだ!まるっきり稚児趣味じゃねぇか!」 「稚児趣味じゃねぇ。俺はちゃんと大人のクロを・・・」  うがーっと怒鳴ればシレッとした顔でゲニオがふんぞり返る。 「外見(そとみ)じゃねぇわ!いくら大人に見えたって実際は五歳のガキじゃねえかよ!」  魔族ってのはこういうもんだっていう見本みたいなゲニオの頭を叩き、ついでにセガロにもケリを入れておく。  だいたい、魔王ガルデリカの側近と呼ばれる六人の魔族はガルの次に力が強くて、俺なんか小指一つで消されるはずなんだけど。  やっぱガルって強いんだな〜と思わずにはいられない。  上級どころか特級といっても過言ではない六人が、人である(まだ魔族にはなってない。まだなってはない)俺なんてどうでもいい存在だろうに、俺の言うまま並んで正座してるんだから。 「とにかく今日はここでしっかり反省しろ!」
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