駅前の憂鬱

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 今日はあそこがかゆい。  爪を立てて無心で掻きむしりたいほどムズムズしてしょうがない。あぁ、でもあそこを人前で掻くことはできない。しちゃいけない決まりになっているし、何より恥ずかしいもの。きっとみんな仰天しちゃう。  とある田舎の駅前広場。  舗装された丸い花壇の中央に小さな女の子の銅像が立っている。  天に向かって無垢な両手を伸ばす、六歳ぐらいの少女の像は、通勤ラッシュの通行人が多い時間帯に、掻くに掻けずに悩んでいた。
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