駅前の憂鬱

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 銅像たちの間では人前で動くことはルール違反である。  破ったところで罰則もないし、誰かにお説教を食らうわけでもない。銅像たちからしたら、後々人間たちに騒がれることが煩わしい。  だから、誰が決めたかも分からないルールにみんな自然と従っている。  そのせいで、少女は痒いところに手が届かない。  おでこが呼んでる。  私のカチカチの焦げ茶色の皮膚が私の右手を召喚しようとしてる。絶対ダメと心に言い聞かせてないと、ついつい手が伸びそう。  あ、あのおじさんこっち見た。ヤダ、ロリコン?でも、今なら撫でても良いわよ。  丁度いいところに来たわね、カラス。  ねえ、その悪趣味なおっきい嘴でちょっと私のおでこを突っついてよ。無視しないで、聞こえてるでしょう。いつもは嫌というほど私を突っついてくるくせに、  なんで今日はスカートの中見てんのよ、変態。カーカー鳴いて見てるだけなんて許さないから。ねえ、その嘴、とっても素敵よ。黒く光ってかっこいい。だから、こつんと一突き…あーあ行っちゃった。あいつ夜中に見てなさいよ。動ける時に丸焼きにしてやるんだから。
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