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車を走らせること、30分。アウトレットモールに到着した。今日は休日のせいか、結構な賑わいである。
安藤は、千歳と腕を組み施設内を回る。それなりに楽しく買い物を堪能していた。不安なことなどすっかり忘れて。
安藤が、喫煙所でタバコを吸っている間に、千歳はトイレに行った。
「な~あんちゃん、お前さんの彼女べっぴんさんだね。あんな綺麗な彼女が居たら浮気なんかしないよな。羨ましいよ。泣かせたらダメだぞ」
向かいの男性が安藤に話かけた。
何だこのおっさんはいきなり。そりゃ羨ましいだろう。美幸はかなり美人だからね。
「もちろんですよ。浮気なんかしませんよ。大切な女性ですから」
安藤は男性に笑顔で答える。
瞬間、ゾクッと鳥肌が立った。また不安にかられた。
「失礼します」
千歳が戻って来たので、安藤は男性に挨拶をして、喫煙所を後にした。
男性は2人をジトーと見つめていた。
「そろそろ帰ろう。お目当ての服も買ったんだし」
安藤は早く帰りたくてしょうがない。
「も~拓馬ったら、そんなに私とイチャつきたいの?」
千歳は甘く耳元で囁く。
安藤は頷く。が、本音はそんな事はどうでよかった。一刻も早く帰り、落ち着きたいだけだった。
外は夕方になり、日も落ちかけていた。道も渋滞し、安藤はイライラしていた。
「クソ~混みすぎだろ」
信号は青信号なのに、なかなか前に進まない事と不安な思いにイライラは最高潮に達していた。
安藤は無理矢理、隣の車道に入り、右折をしようとした。その時、直進でトラックが突っ込んで来た。
「きゃ―――っ」
千歳は断末魔の叫びを上げた。
トラックと衝突して、二度、三度、車は横転して止まった。トラックは電柱に衝突した。
千歳はフロントガラスを突き破り、恐怖で顔を歪め、顔と顎が皮1枚で繋がっている状態で、絶命していた。
安藤は命からがら、何とか車体から出て、体を起こした。
「美幸!!」
千歳の姿に安藤は驚愕し、目を背け、ふらふらと歩きだした。
その時、トラックが衝突した電柱が安藤に倒れてきた。
安藤はそれを呆然と見つめた。
時同じくして、安藤の部屋に飾ってあった、メッセージカードがヒラヒラと床に落ちて、裏返った。
そこにはもう一つの花言葉が書いてあった。
〖あなたの死を望む〗と……。
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