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田中の日常(3)
田中はこの本を読みおわった後、もう一度吉田の投稿を見てみた。
10/2 18:00
仕事を辞めてきました!
これでようやく夢に向かって突き進むことができる。色んな人に支えられて、今の俺があることに感謝しています。みんな本当にありがとう\(^-^)/
そして、何よりも人生の師匠、ユウさんには本当に感謝しています。これからもずっとユウさんの背中を追って、頑張ります!ユウさん、これからも宜しく頼んますm(__)m
田中は携帯の画面を切り、部屋の天井を眺めた。丸い形をした電燈が明かりを灯すことなく、静かに眠っている。
彼もまた吉田のことを忘れて眠ろうとした。しかし、吉田のことが頭から離れられない。
月谷ユウという男が自分の弟子たちから金を巻き上げて、自分の懐を肥やしている愚劣な男だったとしても、おれには関係ない。彼が人生の師匠として月谷ユウを尊敬し、師事するのなら、それは彼の勝手だ。おれに彼の行動を止める道理などない。
そう考えてみるのだが、思考は止まることがなく、興奮するばかりだった。
田中は目を開け、もう一度部屋の天井を眺めた。
「吉田、残念ながらお前の夢は月谷ユウに搾取されてる。このままいけば、お前の夢は悪夢に変わるだろうな…。へ、他人にすがっている時点で、お前の負けだよ。他人に夢なんて託すな。本当に叶えたいのなら、自分でどうにかしろ。そんなこと幼稚園児でも知ってる…。チィ、くそ野郎め!そんなこと早く気づけよ」
外から車の走行音が聞こえてくる。近づいては遠のいていく車の走行音を聞きながら、田中は旧友の悲惨な将来を憂いた。
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