田中の日常

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田中の日常

「はぁ」 彼はフィナーレを迎えた。時間にして四分。 刹那的な快楽が彼の身体全体に染み渡る。 「ふぅ」 三分ほど天井を見つめながらまどろんだ後、彼は近くにあったティッシュ箱から何枚かティッシュを抜き取り、ズボンの中で飛散した液体を綺麗に拭き取った。 これもまた彼の毎日の日課の一つだった。 こうした空虚な時間を過ごし、無意味な日々を集積していくことに、彼は何の躊躇いも恥じらいも感じなくなっていた。彼の日常はすべてが無意味へと化していった。 田中は自身の内に潜む空虚さを、安楽な快楽によって埋め尽くそうとした。しかし、安楽な快楽を求めれば求めるほど、新たな空虚さを作り出してしまっているということに田中は気付いていなかった。
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