1. なぜか気になるハルミさん

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1. なぜか気になるハルミさん

 どきんどきん。心臓が今にも爆発しちゃいそう。  そうっと下駄箱のかげから覗くと、彼はちょうど靴を履き替えるところだった。周りには誰もいない。彼は今、一人。  チャンス!   ……なのはわかっているけど……。  ついにこの時がやって来たのかと思うと、足がすくんで動かない。昨日一時間もかけて書いたラブレターは、手のひらの中で今にもくしゃくしゃになるところだった。  カタン、と靴をしまう音がしてハッと息を飲む。  どうしよう、彼が行っちゃう!   今追いかけないと、もうこんな勇気は一生出せない気がする。  …………でも。  歩き出す彼の背中、眩しくって見てられない。……やっぱり怖いよ、人気者の彼にわたしみたいなのが告白なんて。  そうやってぐだぐだ悩んでいると、背中を指でつつかれた。驚いて振り返ると、りっちゃんが怒ったような顔で何か訴えかけてくる。 ( こ、の、み! は、や、く!)  ……うん、そうだよね。決めたんだもん、頑張るって。告白するって。  りっちゃんに向かってこくりと頷く。  うじうじした自分とはさよならするんだ。そして、きっかけをくれたあの人に……応援してくれたあの人に、いい結果を報告したい。    ゆっくり深呼吸。唇をきゅっと結ぶと一歩踏み出した。  神さま仏さまさま! どうかどうか、わたしに力を貸してください!  山本 木乃実(このみ)、十五歳。  なぜ玉砕覚悟の告白をすることになったのかというと、それは二週間前のとある日にさかのぼるーー
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