77人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
「だから言ったじゃないですか! わたしも手伝いますって!」
「いやそれ無理だろ! おまえ字汚ねぇじゃん!」
「だーかーらー、今必死にペン字練習してるんですってば! っていうか、そもそも字が綺麗な必要ってあるんですか?」
「あるに決まってるだろ、ばか!」
「なっ……! ばかって言う方がばかなんですー」
あんなにドラマチックな後夜祭を過ごしたというのに、わたしたちの低レベルなやりとりは相変わらず。
だけど変わったこともあって、それは……――
「あら」
背中から葵先輩の声が聞こえてきて、くるりと振り向いた。
葵先輩はうふふと笑うと、楽しそうに一枚のメモ用紙をこちらに向ける。
「『初デートのプランを考えてください』ですって」
聞き覚えのあるその文言に、目をぱちくりさせて晴海先輩を見た。
「……ったく」
息を吐きながらゆっくり体を起こす晴海先輩。そのまま先輩とわたしのカバンをひょいと担ぎ、三歩ほど歩いたところで振り返ると、「ほら」と言ってわたしに右手を差し出してきた。
「えっ? えっ?」
「え、じゃない。行くぞ」
焦れた先輩がわたしの左手をぎゅっと握る。そのままぐいっと引っ張られて、先輩と共に歩き出す羽目に。
最初のコメントを投稿しよう!