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もやもやした心を、そのままにして花束を作っていると店長が帰ってきた。 俺は、店長がテラスに入ってくるのを確認して、お疲れ様です、と声を掛けた。 「どうしたの、何かあった?」 「いや…」 「何かありました、って顔に書いているよ。どうしたの」 「何でもないです」 「ホント?田淵君ってほんと顔に出る子だね」 店長は、眉毛をえらく下げた顔で俺に言う。 「…すみません」 「何で謝るの、あたしもバツが悪くなるじゃない。まあ、話したくなったら言って」 突き放すように店長は言う。 店長は40代だそうだが、中々若い、と俺は思っている。中年なのは隠せないが、この人は全く歳を若く見せたいとか、そんなことを一切見せてこない。女として、気を遣わなくていいというのは自分にとってとても助かる。女の心というのは、本当に厄介だ。何度も何度も、嫌な思いをしてきているのだ。 サバサバとした性格が、とても気に入っている、俺はそう思っている。 こんなに長くこの店で続いているのも、この店長のおかげだと思う。 「この花束、いいじゃない?アレンジがすごく私好み」 「そうですか」 「うん。やっぱり…私が教えてるからか、好みが似て来るのかなあ」 店長は少し、申し訳なさそうに言った。 「あ。そういえばさあ、今日仏花買いに来た人いなかった?背が高くて…スーツの」 「…ああ」 「来たんだ」 「来ましたよ、店長が配達に行ってすぐ位に」 あの人、何なんですか、と俺は尋ねる。 店長は、それが良くわからないんだ、と言う。 聞いておいて、店長も知らないといったことに何だかおかしく感じた。 「知らないんですか」 「…知ってるのは、今月から同じ曜日の同じ時間に来るってことだけ」 ちょっといい男じゃない?と店長は言った。 「…そうですか?俺は、感じ悪いって思いましたけど」 表情がむすっとしているのが自分でも分かった。 「もしかして、そんな表情してるの、あの人の所為?」 「…」 「図星だ」 いえ、俺は別に、と言うと店長ははいはい、と言って、カウンターにベルを置いた。 「あの人と何があったか知らないけど、そんなに悪い人じゃないと思うな。まあ、あたしも何やってる人だとか全く知らないんだけど。また来たら、仏花売ってやってね」 はあ、と俺は気力なく返事をする。 店長はベルをチーンと鳴らすと、お昼にしよう、と言った
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