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夕方、店先に並んだ鉢植えを全て店の中に戻す。毎日の作業だった。この作業が、俺は嫌いじゃない。何故か、はよく分からないが一日の終わりの節目のようなものと思っているのかもしれない。 ピリオド。 ピリオドのように、毎日の作業をこなす。 その後の解放感が好きなのかもしれない。 店の外にあった鉢植えたちを仕舞うと、ひんやりとした空気が自分の周りを纏う。今まで鉢を運んでいたので寒さに気付かなかったのだ。 「たぶちくーん」 店長が自分を呼んでいる。 はい、と一つ返事をして、テラスから中に入っていった。 「もう寒くなってきたし、上がっていいわよ」 はい、コレ、と言って店長は俺に包みを渡す。 「…」 黙ってる俺に、あったまるよ、と言う店長。中を確認すると、焼き芋が入っていた。 「あたし大好きなんだコレ。食べながら帰りなよ」 「…ありがとうございます」 俺はお礼をいうと、お疲れ様でした、と言って店を後にした。外は結構寒くて、帰りがけに薄いジャンパーのようなものでも買おうか、そう思った。 袋の中はほかほかで、食べようと思ったが家で食べた方が絶対美味い様な気がして、家まで持って帰ることにした。 駅は夜だったが人が多く、俺はうんざりした。 人ごみが好きではない理由はうまく言えないが、それぞれの人間の想いや熱が交錯して、自分までそれに流されそうになる、と言ったところだろうか。自分でありたいのにそれを許してもらえない、それがたまらなく嫌だった。 駅ビルに、外資系のアパレルの店があったので、3000円の安いジャンパーを買った。 タグを切ってもらい即座に袖を通す。良かった、これで少しは温かい。 「田淵さん…?」 ふと、声を掛けられ振り向く。 そこには見慣れた男が立っていた。 「あ…」 「やっぱり田淵さんだ。僕です、覚えてますか?」 覚えてるも何も、と俺は思う。 「後輩の山本」 「良かった。田淵さん、僕の事忘れちゃったのかと思った」 山本はにっこりと笑って、照れくさそうに頭を掻いた。
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