2話「スケベなニワトリ」

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勾留期間を設ける事には、捜査の過程で犯人の逃走を防ぐという名目も含まれている。発煙筒の件に関して誰か別の者が関わっている事については早々に見つけなければならないが、被疑者を確実に逃がさない方法についてはこの時点において辰実の中で確立していたと言っても良い。 「もうしつこいくらいに分かってると思うが、もっと問題なのは発煙筒の出処だな。」 「ここに別の人が噛んでるとしたら、火薬が他の犯罪に使われる事だってあるという可能性ですか?」 「そうなる。」 まずは強盗事件を起訴するために必要な材料を揃える事だろう。辰実にしても梓にしても、目先の事件を解決しなければ調査にも入る事が出来ないのが現状であった。  * 若松商店街、南側駐輪場。 現場には被害者と思われる大学生風の男女、そして制服を着た高校生風の男女。そして制服姿の警察官が2人、帯革と呼ばれる装備品用のベルトにカバーのされた拳銃、手錠、警棒を装着し鉄板を中に仕込んだベストを着用している。これは警察官に貸与される装備で、ポケットには無線機を入れる事ができる。 110番があれば初動にあたる地域警察官は、通常この装いと認識して良い。 「お待たせしましたー、生安です。」 お疲れ様です、と頭を下げる若い地域警察官。梓はこちらの警察官が高校生風の2人から聴取しているのに入る。 「お疲れ」 「お、辰ちゃん」 もう1人は辰実と同期の錦田健一。 「商店街の駐輪場、今あそこに2つ白いママチャリが置いてあるじゃない?戻ってきた時に丁度、制服の2人がそれに乗ってどこかへ行こうとしてたのを止めたって感じだね。…施錠はしてなかったみたい、先日俺が被害届を書いた自転車だからよく覚えているよ。」 乗って行かれる自転車の大半が無施錠である。「ちょっとだけなら」と言ってその場に置いて数十分程で用事を済ませて戻ってきたら自転車が無いなんてのは現場の警察官からすれば教官の怒号より見てきた可能性があった。…これも盗まれた自転車は別の場所で乗り捨てられている事があるのだが、そもそも盗まれる事が問題であるのだ。 (馬場ちゃん側の2人組がどう言ってるかだな。) ここで、「自転車を盗みました」と自認すれば署に連れて行って話を聞く必要がある。しかし事件というモノは常に何が起こるかわからないので、辰実は一度深呼吸をし頭の中を真っ新にした。
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