2 追い打ち

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2 追い打ち

 実家を出た俺は、近くのコンビニのATMに来ていた。  カードローンを利用して、現金を降ろすためである。 「よし、これで」  俺はクレジットカードの機能もついているほずみ銀行のキャッシュカードをATMの差込口にいれた。  それから、画面の中かからカードローンを選択した。    しかし、カードローンは利用できなかったのである。 「ちょっと。どういうことだよ」  つい、そう口にしてしまった。  近くに居た店員がチラッとこちらを見る。店員が俺をどう思ったかは知らないが、決して良い感情は持たなかっただろう。  そして、カードローンが利用できない理由は直ぐに判った。  銀行口座の残高が数百円だからだ。残高が一定額を下回ると、カードローンは使えないのだと以前調べたことがある。  俺はコンビニを出た。  一週間後に3万円の現金が入る。だが一週間も待ってはいられない。  どうすれば良いのかと考えたが、希望はあることに気が付いた。 「確か自宅に1万円はあるな」  銀行のシステムエラーなどでATMが利用できなくなると困るので、1万円は現金として家に置いてあるのだ。  これで、一週間は耐えられるだろう。それに最悪な事態に陥ったら、流石に母親も助けてくれるはずだ。  俺は残り少ない硬貨を券売機に入れて切符を買い、自宅へと戻った。    一週間が経過する。  ようやく、3万円が振り込まれた。  俺は自宅近くのコンビニへ行き、残高を確認すると確かに3万円が振り込まれていた。早速、カードローンの画面へと移したのである。そして10万円全額を引き落とそうとした。  しかし、現実に10万円の現金が下りることはなかったのであった。  どういうことか。3万円では足りないというのか。  仕方なく自宅に帰った。 「どうして、こんなことになるんだよ」  現実に怒っていても、解決はしない。  特に考えたわけではないが、銀行通帳を見ることにした。普段はキャッシュカードで充分なので、通帳を使うこともなければ、見ることもない。  そのため通帳に記載されている履歴は2カ月も前のところで、途切れている。 「あ、まさか」  通帳のある部分に目がいった。    ――― カードローン ゴヘンサイ 2,000 ―――  これはカードローンの返済を意味している。 「そうか。確か借りていたな……」  思い出した。  俺は3カ月くらい前に、カードローンを利用していたのだ。それも10万円全額を借りたはずだ。それで毎月の返済は2000円である。 「なんてことだ……」  カードローンを利用した理由を思い出す。   退職した会社に関わる実務講座を受講するためだった。  なんてことだ。  もはやカードローンもろくに使えはしない。  ここは、本当に母親に頭を下げて助けてもらうしかないか……。  他に何か策はないか。  一週間も経過して、事態は緊迫しつつあったのである。
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