6人が本棚に入れています
本棚に追加
2 追い打ち
実家を出た俺は、近くのコンビニのATMに来ていた。
カードローンを利用して、現金を降ろすためである。
「よし、これで」
俺はクレジットカードの機能もついているほずみ銀行のキャッシュカードをATMの差込口にいれた。
それから、画面の中かからカードローンを選択した。
しかし、カードローンは利用できなかったのである。
「ちょっと。どういうことだよ」
つい、そう口にしてしまった。
近くに居た店員がチラッとこちらを見る。店員が俺をどう思ったかは知らないが、決して良い感情は持たなかっただろう。
そして、カードローンが利用できない理由は直ぐに判った。
銀行口座の残高が数百円だからだ。残高が一定額を下回ると、カードローンは使えないのだと以前調べたことがある。
俺はコンビニを出た。
一週間後に3万円の現金が入る。だが一週間も待ってはいられない。
どうすれば良いのかと考えたが、希望はあることに気が付いた。
「確か自宅に1万円はあるな」
銀行のシステムエラーなどでATMが利用できなくなると困るので、1万円は現金として家に置いてあるのだ。
これで、一週間は耐えられるだろう。それに最悪な事態に陥ったら、流石に母親も助けてくれるはずだ。
俺は残り少ない硬貨を券売機に入れて切符を買い、自宅へと戻った。
一週間が経過する。
ようやく、3万円が振り込まれた。
俺は自宅近くのコンビニへ行き、残高を確認すると確かに3万円が振り込まれていた。早速、カードローンの画面へと移したのである。そして10万円全額を引き落とそうとした。
しかし、現実に10万円の現金が下りることはなかったのであった。
どういうことか。3万円では足りないというのか。
仕方なく自宅に帰った。
「どうして、こんなことになるんだよ」
現実に怒っていても、解決はしない。
特に考えたわけではないが、銀行通帳を見ることにした。普段はキャッシュカードで充分なので、通帳を使うこともなければ、見ることもない。
そのため通帳に記載されている履歴は2カ月も前のところで、途切れている。
「あ、まさか」
通帳のある部分に目がいった。
――― カードローン ゴヘンサイ 2,000 ―――
これはカードローンの返済を意味している。
「そうか。確か借りていたな……」
思い出した。
俺は3カ月くらい前に、カードローンを利用していたのだ。それも10万円全額を借りたはずだ。それで毎月の返済は2000円である。
「なんてことだ……」
カードローンを利用した理由を思い出す。
退職した会社に関わる実務講座を受講するためだった。
なんてことだ。
もはやカードローンもろくに使えはしない。
ここは、本当に母親に頭を下げて助けてもらうしかないか……。
他に何か策はないか。
一週間も経過して、事態は緊迫しつつあったのである。
最初のコメントを投稿しよう!