3 摩訶不思議な出会い

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3 摩訶不思議な出会い

 本当にこれからどうしたものか。一週間もすれば家賃の支払日がやってくる。厳密に言えば、銀行口座から引き落とされるわけだが、今の残高は3万円ちょっと。  安い物件を借りており、家賃はぴったし4万円。しかし、今は3万円しかない。あと1万円足りないのだ。  しかも、いずれ訪れるであろう光熱費やインターネット料金、さらに携帯料金の支払いもある。 「大阪のドヤ街にでも行って、日雇いの仕事でも探すか……」  こう考えれば幸いにして、3万円の現金はある。  大阪までの電車賃は充分にあるのだ。新幹線は使わず、普通列車を使えばいい。そうすれば片道1万円前後で行ける。 「ここで、うだうだしていても意味はない。いっそ大阪へ行ってしまおう」  俺はまたコンビニへ行くこにした。  ATMで3万円をおろすためである。  そして、部屋の玄関の鍵を閉めそれからアパートの入口を出る。 「なっ……」  その時、俺は異様な光景に出くわしたのであった。なんと俺の視界の全面が、お花畑になっていたのである。これは決して俺の頭のことではない。  しばらくこのあり得ない光景に見とれていると、白髪の長髪が目につく老人が近づいてきた。  仙人と言えば、イメージがつくかもしれない。   「ふふっ。そんなに惚けてどうしたのじゃ? 」  と、言う。 「だ、誰ですか……? 」  突然の出来事の未だ驚いていた俺は、老人にそう訊ねたのである。  初対面の者に対して失礼かもしれないが、致し方ない。 「この光景に驚いているのじゃろう。しかしお主が今ここに居るということは、選ばれたとうことだ」  と、老人は訳の分からないことを言った。俺は一応「誰ですか」と訊ねたのだし、名乗ってくれても良いのにと思う。とはいえ、今はこの老人が何者かはあまり重要ではないかもしれない。  むしろ、老人の「選ばれた」という言葉の方が気になる。 「選ばれたとは、一体どういうことですか? 」  俺はそう老人に訊ねたのであった。
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