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5 異世界での長い闘い
ここは、王国である。
この王国に名前はない。かつて帝国があり、この王国があり、そして3つの公国があった。既に帝国と3つの公国は10年ほど前に魔物によって滅ぼされた。まともに抵抗できる勢力はこの王国しか残っていないだろう。
ただ、この王国も城壁のある王都や町のみをわずかに残すのみで、国土のほとんどを魔物が闊歩している。
食料も、まともに供給できない状況に陥っているのだ。
「魔物の襲撃してきたぞ! 」
王宮の兵士がそう叫ぶ。
その叫びで、俺たちは戦闘準備に取り掛かるのであった。これから、また誰かが死ぬ戦闘が訪れたのだ。
ある者は体を引き千切られて死に、またある者は大型の魔物にまるごと喰われて死んでいく。俺もいつ頃のことだったか、左手を喰われて無くなっている。
「そう言えば、あのご老人はまだ生きているのかな」
不意に昔出会った老人を思い出して、そう呟いた。
もう30年は前の話である。
「団長! 俺たちは準備が完了しました」
部下がそう言う。
「おうそうか! じゃあ後は気合を込めていくぞ! 」
俺は長い月日を戦い続け、今ではそこそこの規模を誇る傭兵団の団長になっていた。そのため貴族や王族ともある程度は、面識を持っていたりもする。まあ、このご時世に役に立つものではないがな。
そして、城壁の門が開けられた。
ここ最近では、城壁の中から弓で攻撃するという手法ではなく、あえて城壁の外へ出て戦うという方針になっている。決めたのはあくまでもお上だ。俺たちはそれに従い働き、報酬を貰うだけである。
俺たち傭兵が真っ先に門の外へと出ていく。1分もしない内に、魔物と交戦状態に入った。
「よおおし! まずは1匹」
俺は早速、比較的大型の魔物1匹を狩った。
部下たちも魔物を狩っていく。しかし魔物の数は多すぎるのだ。狩っても狩っても、キリがないということは、長年この仕事をやってきて当然知っている。しかし、魔物側もある程度の損害を出すと撤退するということも事実だ。今回も魔物を狩れるだけ狩り、そして撤退させれば良い。
そして10分もしない内に、魔物は撤退の動きを開始した。
後はこちらも王都に戻るだけだ。
だが、ここにきておかしな事態は発生したのである。
なんと、魔物も去っていったというに王都の門が閉まったままなのだ。一向に門が開く気配はない。
俺は頭の片隅で、ネガティブな想像をするのであった。
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