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8 村へ
結局俺に付いて来られたのは、この女だけだった。
赤いショートヘアーが印象的だ。それに着ている服装からしてそれなりに身分の高い者なのだろう。
「大丈夫か? 」
「ええ」
「村まではもう直ぐのはずだ」
俺はそう言って、女の手を引いた。
そして以後、幸いにして魔物と出くわすことなく何とか村があるはずの場所に到着したのであった。判っていたことだが、魔物に滅ぼされており、廃村になっている。
だが、一部建物は残っているので、そこで身を隠すことはできるだろう。
「中を確認してくるから、待っていろ」
俺は、建物の内部に危険がないことを確認し女を呼んで中に入れた。
「たったの2人になってしまったが、何とか町には行きたい」
俺はそう切り出した。
「ええ。私も何としてでも町へは行きたいところです……」
そう言う女だったが、何か特別な使命があるように感じたのである。
しばらくの間、静寂に包まれる。
……。
「もはや、こういう状況です。貴方を信頼してお話しますね。実は私は第一王女なのです。王弟の陰謀によって、王都から締め出されたのです。私のせいで貴方たちにもご迷惑おかけして申し訳ございません。お亡くなりになった貴方の部下たちについても、どうお詫びすれば……」
第一王女だったのか……。
と言うことはだ。
あの黒い甲冑姿の男は表向きは、俺たち傭兵を嫌悪しての行動としてこの第一王女を王都から追い出すことに成功したわけだな。
そして、そういう行動に出る理由はとても簡単だ。
次期国王を目指しているのだろう。こんなご時世とはいえね。
「特に謝る必要はない。殿下は王女として、とても酷な立場にあると思うよ。だかたなら尚更、町へ行かないとな! 」
俺はそう言って、彼女を励ましたのであった。
それに、あえて敬語は使わなかった。
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