夢ノ後先

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 アリスは、白の青年と茶の青年をじっと見つめていた。  そして、その腕の中に抱かれたホワイトと三月を。  大団円の中、残る謎はただ一つ。  疑問符を浮かべるアリスを横目に、ヤマネが青年二人に駆け寄る。 「先輩!」 「先輩?」  ヤマネの言葉に、クイーンは首を傾げる。 「いやあ先輩、すみませんねえ。昨晩は急な要請に付き合ってもらって」 「やあ、改めて久しぶり。突然のことで驚いて、夢か冗談かと思ったけどね」 「全くです。こうして片が付いて良かったですがね」 「あっはっは、手厳しいなあ。でもこうして一晩で色々用意できちゃうのは、さすがですねえ」  そのまま親しげに話を始める三人を、中学生四人組は呆気に取られて眺めているしかなかった。  しばらくして(しび)れを切らした帽子屋が、その場を代表して質問した。 「あの、昨日はありがとうございました。今更で申し訳ないのですが、お二人は……?」 「ああっ、そうだったねえ。良秋もこの人達知らないっけ?」 「知らん」  ヤマネは今気付いたというようにポンと手を打つ。  幼馴染の言葉に、帽子屋は顰めっ面をした。  青年二人を並べると、ヤマネはあっけらかんと紹介をした。 「えー、こちら俺の先輩。んでもってアリス達の大先輩だねえ。うさぎの初代世話係で、ちなみに二人とも俺と同じ高校の三年生だよー」  紹介を受けた青年達は、恭しくお辞儀をする。 「どうも、改めてよろしくお願いします」 「そういうこと。ホワイトと三月の世話、ありがとうね」  二人はアリス達を見て優しく微笑んだ。  一方の、アリス達四人はというと。 「……大先輩?」 「高校、三年生……?」  大人びていて高校生には見えない。  そんなことよりも。  青年達がホワイトと三月の化身だと、密かに全員が考えていたため、その衝撃は計り知れなくて。 「「「「ええええええええっ!?」」」」  絶叫が、徐々に温度を上げる初夏の中庭に響く。    盛大な叫び声と共に、今回のうさぎ小屋を巡る騒動も、無事幕を下ろしたのだった──
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