エピローグ

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 帽子屋はアリスの方を振り返る。 「アリスも何か──」 「やっほう!」 「わっ」  言葉の途中で声をかけられ、帽子屋は驚き背後を振り返る。  ほかの三人も釣られて彼の方を見る。  立っていたのは、ヤマネと二人の大先輩だった。  一方は月白の髪に、灰青の瞳。  もう一方はフワフワの薄茶の髪に、グレーの瞳。  同じ高校の制服を着た二人とヤマネに、場の注目が集まる。 「あ、こ、こんにちは!」 「あはは、良い良い。気を遣わないで」  アリスが慌てれば、茶髪の先輩は気さくに笑う。 「ふああ。今朝、高校組も滑り込みセーフだったよ」 「どうしたんですか? 今朝で用は済んだんじゃ……」  帽子屋が問うと白髪の先輩は、仕方ない、と言いたげな顔をして口を開いた。 「気になっていることがあったでしょう? その解答をしようと思いましてね。まず貴方達、僕達をホワイトと三月の化身か何かと勘違いしていたでしょう」 「……」  誰も答えられない。図星だったからだ。 「それも仕方のないことです。『うさぎの毛の色と髪色が似ているから』というとんでもない理由で、僕達二人が最初の飼育係に選ばれたのですから」 「えっ」 「そういうことだよ」  驚きの声が上がる。  白髪の先輩の言葉に、茶髪の先輩がVサインをした。 「あ、あの、その髪って……」  アリスは遠慮がちに問う。   「これですか? サクラ──彼はクォーターなので茶髪でして。僕の白髪はまあ、病気のようなものです。ああ、同情は結構ですよ。自分の髪の色、実はあまり好きではなくて」  白髪の先輩がやや眉根を寄せて答える。  それを笑い飛ばしながら、茶髪の青年は帽子屋のグレーのキャスケットを指差した。 「あは、ナイ──この人コンプレックス激しいから、中学時代はずっと帽子被っててさ。ほら、今君が被ってるそれだよ」 「えっ!?」  帽子屋が自分のキャスケットを触る。  まさか本当に、小屋を継ぐ者に代々継承されるものだったとは。 「……帽子屋大先輩?」 「やめろアリス、俺のアイデンティティがなくなる!」  アリスが怖々と白髪の先輩をそう呼ぶと、帽子屋が嘆く。  周囲からどっと笑いが起こった。
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