エピローグ

4/5
前へ
/53ページ
次へ
 白髪の青年は、そんな後輩に優しい視線を遣りながら補足した。 「サクラのお父上は、大きな会社の社長さんでしてね。そのお蔭で材料の調達などをしてもらえたのですよ」  サクラと呼ばれた茶髪の青年は、謙遜しながら笑う。   「いやあ。ナイこそ旧家のお坊ちゃんでね。事務長にすんなり話を通せたのは、そのお蔭さ」 「できれば家の名前は使いたくないんですがね……」  ナイと呼ばれた白髪の青年は、心底嫌そうにこめかみを押さえる。  茶髪の青年は対照的に、非常に楽しそうに、大きな口を開けて笑った。 「ま、そういうことで、ヤマネ君の情報もあって、ああいう運びになったという訳でした。まさか今朝の言葉、ハッタリだと思った?」  大先輩達はすらすらと種明かしをする。  完敗だ、と中学生四人は思った。  学校にではなく、自分達の先輩に。  スケールが違う。  やはり自分達はまだ青く、子供だった。 「ヤマネサン、昨日オレの前に電話してたの、この人達のところだったんだね」  チェシャがポソリと呟く。  それしか言えないことに、次第に笑いが込み上げてきて、アリス達はあっはっはと大声で笑った。  逆に、これからそんな大人になるのかと思うと、ワクワクして仕方がない。 「おーい、俺達もまだ高校生なんだけどなあ……って、聞いてないし」 「まあ良いじゃないですか。若くて」 「うん。若いね」  しみじみと高校生組が語る。  涙目になるほど笑った後、アリスは小屋の後ろに回った。  そして白く大きな袋を抱え、皆の面前に戻ってくる。 「何だ、アリス? 今日はホワイトと三月がいるから、花火はやらないぞ」 「それくらいは分かってますよ!」  帽子屋が呆れ声をかける。  アリスは頬を膨らませて、一転、弾けるように笑った。 「昨日用意した玩具の中に入ってたんです。祝砲代わりに、皆でシャボン玉やりませんか!」  その声に、嫌な顔をする者はいなかった。  チェシャが屋根から飛び降りる。  クイーンが、きゃあと歓声を上げる。  先程まで反省していた帽子屋も、つばを上げて微笑む。   「お、良いね」 「懐かしいなあ」  高校生組も反応は上々だった。  袋に手を突っ込んで、それぞれが好きに道具を取っていく。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加