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うるさい。とでも言うように再び爪の音が聞こえ、全員が口を閉ざした。
皆がせめて何か見えないかと一点に目を凝らす。しかし、閉められたふすまの奥は何も変わらない。
「とりあえず大食いの撮影はしよう。ドタキャンなんてできない」
リーダーの一言で全員が頷き、各々が出かける支度を始めた。
ぎい。と、再度爪の音が鳴る。
全員が振り返ると、閉まっていたはずのふすまが少し動いている。誰も通れないが、中からこちらを覗くにはちょうどいい具合に少しだけ開けられている。
覗かれている。
誰もがそう直感し、和室に何かがいないか凝視する。少しだけ開けられた場所は暗く、何も見えない。広がるのは闇だけだ。
「気にしない方がいい。早く行こう」
一時間で三キロの肉を食べ切れれば無料。
漫画のような骨付き肉、濃いソース。ご飯やスープはおかわり自由。そんな謳い文句のチラシを見ながら一行は店内に入る。
「あ」
入って早々、ドコロが声を上げた。
視線の先には一人の男性がいる。その男性はこちらに気が付いたらしい会釈をしている。
「知り合いか?」
ヨシキの言葉にドコロは首を横に振った。
「いや、でもなんか……」
「待て。近寄ってくる」
ショウの言葉に全員はこちらにくる男性を見た。
「こんにちは」
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