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全く気にしない百合哉の様子に全員は「自分たちは騙されているんじゃないだろうか」と疑問を持った。それでも、悩んでいる暇はない。
収録に気をつかってか、人があまりいないスペースに案内され、指定された席に着いた。
「なあ。大食いに挑戦するのはサトーとヨシキなんだろ? カメラを回すのはドコロに任せて俺はあの人から話を聞いてくるよ」
ショウが声を潜めて言う。
「確かに全員はいらないし」
「いてもうるせーだけだしな」
反対する人はおらず、話はすぐにまとまった。
ショウは務めて明るく、百合哉が座る席に向かった。
「すいません。話を聞いてもいいですか? 俺はメンバーの代表でして」
百合哉は注文表を見ながら頷いた。
ショウも同じように注文表を取り出し内容を確認しながら目の前の男を伺う。
肩まで伸びた茶色の髪、琥珀の瞳、整った顔立ちで体型も細い。女の子に好かれるだろうなと思ったのが素直な感想だった。
「先に自己紹介をしましょうか。私は五条 百合哉と申します。職業は……、なんでしょうね。喫茶店で人の話を聞いています」
「喫茶店? 霊能者ではなく?」
百合哉は穏やかな様子で「はい」とだけ答えた。それ以上答える様子はないのか目は再び注文表に向く。
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