鼾ーイビキー

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 再生してすぐ、俺は愕然とした。  あまりにうるさすぎるではないか。これを再生したまま寝ろと言われたら無理だ。  そうか。妻はずっとこの音を聞かされながら眠っていたのか。  しばらくすると、無呼吸状態というのか、声が途切れてイビキが止む瞬間もあった。でも、それはほんの数分でまた元の大音量に戻ってしまう。  申し訳ない気持ちが込み上げ、停止しようとした時だった。 「フフフッ……」  え?  気味の悪い女の声が聞こえたような気がして、思わずイヤホンを外して投げた。  なんだ、今のは……?  巻き戻してもう一度聞いてみる。 「フフフッ……フフフッ……苦シメ……モット苦シンデ 死ネ……」 「う、うわぁぁぁ!!」  社食で周りに人がいっぱいいたことも忘れ、俺はスマホを投げ大声で叫んでいた。  聞き間違いじゃない。はっきりと女の声が入っている。  感じたことのないような恐怖に体が震え始めた。 「何、どうしたの? 顔真っ青じゃん」  食事の途中だった青木が血相を変えて飛んできた。 「ヤバい、ヤバいんだよ、これ」 「ヤバいって何が? とりあえず落ち着いて。落ち着いて分かるように説明して」  周りの人が何事かと俺をジロジロみていたので、青木は俺を社食の外へと連れ出した。 「俺、お前に言われてイビキ録音できるアプリをダウンロードしただろ? で、昨日さっそく録音してみたんだ。けど、おかしいよ。これ。変な声が入ってるんだ。ヤバいよ、どうしよう」 「なに、変な声って。イビキじゃないの?」 「ち、違うよ。俺のイビキとは別に、女の……女の声が入ってるんだ!」 「ええー、女の声? 奥さんの声じゃないの?」  当然かもしれないが、青木は全く信じていないようだった。
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