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出張で同僚の青木と同じ部屋に泊まった時、衝撃的なことを言われた。
「昨日、イビキがうるさくて、全然寝れなかったんだけど」
「え、マジで? ごめん。自分じゃ全然分かんないから」
「奥さんにうるさいって言われないの? あの音じゃ寝れないと思うけど、奥さんよく我慢してるね」
指摘されて、妻のことを思い出した。思えば、一度も苦情を言われたことはなかった。
「そんなに酷いんだ、俺のイビキって」
「酷いなんてもんじゃないよ。マネできないけど、マジでうるさいから。一回さぁ、あれやってみたら? イビキ録音できるアプリ。とりあえず、自分がどれだけすごい音出してるか聞いた方がいいよ」
自分が寝ている時、どれほど不快な音を出し、他人様に迷惑をかけているのかなんて考えたこともなかった。
同僚の勧めもあり、俺はさっそく録音アプリをスマホにダウンロードした。
寝る時にスマホの画面を下向きに置くと自動で録音してくれるらしく、イビキの音から鼻づまりとか疲れが溜まってるとか原因を教えてくれるというものだった。原因に関しては信憑性があるのか分からないが、試してみる価値はあると思った。
「なあ、俺って寝てる時、イビキうるさいかな?」
家に帰ると、妻にも尋ねてみた。
「え? そうね。疲れてる時は結構激しいかも」
「うわー、やっぱそうなんだ。ごめん」
「仕方ないわよ。イビキなんて自分で止められるものじゃないし」
優しい妻の言葉にいくらか救われたが、とにかく自分で録音して聞いてみないことには、どれほど迷惑をかけているのか実感することはできない。
その夜、試しにスマホを下向きにして眠ってみた。
翌朝、出張の疲れもあってぐっすり眠ったせいか、寝坊気味に目を覚まし、慌てて会社へと向かった。
せっかく録音したのに、朝は聞く暇がなかったから、昼休みにイヤホンをして自分のイビキを聞いてみることにした。
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