0人が本棚に入れています
本棚に追加
無線で聞かされた通りこの地区はもう戦闘域になっているのだろう。
空気はどんよりと重く、視界の先には黒く染まった街並が見える。それは異世界へと続く門であるかの様だった。
少年は躊躇なく突っ込んでいく。
『晶(あきら)、何度も言うけど無茶しないでよ!それと――』
無線機越しに聞こえた女声が突如として切れてしまう。
現実世界にまで干渉を始めた魔力による通信障害だろう。何かを言いかけていたようだが現状聞き返したところで答えが返ってくることはない。
「早いな……」
晶と呼ばれた少年は舌打ちをしながらバイクを止める。
リアシートに括りつけた小銃を手に取り周囲を警戒する。弾薬の確認をしてみればここ最近続いた災害対応のせいか心許なくはあったが歩を前に進める。
誰かが止めなければ、”彼女”は街全てを飲み込むのだから。
気づけば周囲から音が消えている。
先行投入されたオートマタ達も多分その役目を終えたのだろう。
「他の連中は……まだ来てないのか?」
先程の話では他の民対も向かっているとのことだったはずだ。しかし、周囲には音というものが無い。
が、黒く染まりつつある街を見れば災害の進行は止まっていない。
最初のコメントを投稿しよう!