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 ふと老婆の手に何かが握られているのに気づいた。小さくて白い花。外側の花弁が反っている形は、私の目には珍しく映った。花に詳しくないから正体は分からない。素手で握られている花を見て、せめて紙に巻けばいいのになんて考えてしまった。   「エンドウのお婆ちゃんだね」  隣で母が呟いた。   「遠藤さんって言うんだ、あのお婆ちゃん」 「何言ってんの? 名字なんて知らないわよ」  へ? 母の顔を見た。   「だって今、遠藤のお婆ちゃんって」 「違う違う、花の話よ」
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