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『私は 思い当たりません
けど、 確かに 私を 追ってきています
あと 意味は 解らない の ですけど』
鞠音は何かを思い出そうとするように瞬巡する。
『私を 入れ物 と 呼んだり 解放 して あげる って何回も言ってました』
歳破はその字を追って、なるほど、と思う。今度は犬神を見なかった。鞠音は犬神を知らない。
歳破自身、知っていると言うより察している部分が殆どだ。憶測で語るには酷な内容であり、鞠音がそれを知ることがあるならば、それは歳破よりふさわしい人物がいる気がした。
「なるほど、鞠音さんに何か秘密でもあるとでも言いたげですね。」
『あれは 何でしょうか? 人みたいな 姿でした
けど、 言うことが 通じません ただ 一方的に 襲ってくる
まるで 災害 みたいな』
「鞠音さん、何であるかは問題ではありません。重要なのはその追っ手がいる限り、逃げ続けなければいけないと言う事です。相手の事を知るには情報が少なすぎるし、相手の言い分も解りません。と言うか、興味がない。実に、身勝手で…意味不明だ。そんな暴力に鞠音さんが脅かされるのは許しがたいです。」
冷静な口調が、徐々に冷淡さを帯びてくる。
ついうっかり、「そんな悪い虫は殺してしまいましょう」と物騒なことを歳破は口を滑らせかねない勢いだ。
「安心してください。貴女の驚異は私が排除します。そしたら、落ち着いて貴女を診察しましょう。身体中傷だらけですよ。」
ソッと鞠音の頬に歳破は手を伸ばす。
「こんなになるまで頑張って、偉かったですね。」
そして、歳破は鞠音の額に口付ける。
鞠音は思わず頬を染める。
(…。歳破さんが診察って言うといやらしいわ…)
照れ隠しに鞠音は余計なことを考えて誤魔化す事にした。
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