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禍<わざわい>
その日は朝から風が吹いていた。
春らしく、暖かい陽気の中、馬が走り抜けるように軽やかで力強い風だ。
「…」
(…今日は風が強いのね。暖かくて気持ち良さそう…。)
雑貨屋『鴉花四』の中から、鞠音は外を眺めた。
窓から見える空は青く、眩しかった。
主人である鞠音は生まれつき声帯がなく、喋ることはできない。
見た目も白髪に人間にしては多すぎる睫毛。金色の瞳と言う一風変わった出で立ちだ。
しかし、彼女自身の人柄もあって、喫茶店と雑貨を併設した鴉花四は広い客層で賑わっていた。
ーカランカラン。
鴉花四のドアが開いた。
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