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「ー…君は、精霊?」
3本の純白の長剣で店員の刀を押さえながらラトは言う。
「君もずいぶん不思議なんだねえ。」
「くっ…」
声音とは対照的に、長剣は押し潰さんばかりに力を増す。
「人でないなら命は取る必要はないのだけど、でも…敵なら仕方ないね。」
「っ」
4本の長剣が店員の身体を店の端まで吹き飛ばした。
「邪魔はさせないよ。あの汚ならしい入れ物から、彼女を出してあげるんだ。」
白い男、ラトは足元に噛み付いた犬を斬り伏せる。夥しい血を撒き散らし、犬は息絶えた。
すでにその顔は正気の物ではない。息耐えた犬は苦悶に気が触れた顔をしていた。
斬られたからではない。ラトの裾に、店内に駆け込んできたときから、曰く、初めから正気ではない。
正気だったなら、ラトに噛み付こうなどと考えられるはずがない。正気など、ましてや意識など奪われ、ただの傀儡と化していた。
操り、使役する主を守る道具として。
「…これが君の力なのかな。」
ラトはひとりごちると、鴉花四の外へ出た。
遠く、視線の先には鞠音がいる。
「……」
ラトの身体がふわりと宙に浮かぶと、鞠音に向かって飛んでいく。
「!!」
振り返らずとも解る近付いてくる存在感。鞠音はとにかく一歩でも脚を進めた。
「…死になさい。」
ラトが鞠音に肉薄する。
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