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「黒羊?!」
黒羊と呼ばれた黒髪のドールは呼吸を整えながら、敵を見ている。
「…?!」
敵を確認した劉騎も目を見張る。
ラトは全身に傷を負っていた。黒羊と鍛練している劉騎は黒羊の戦闘スタイルを良く解ってる。体重と回転を掛けた長剣の斬撃は、一刀一刀が重く鋭い。
つまり、確実に身体に当たれば、戦闘続行や命に関わる致命傷になりうるのだ。
「…いたいなぁ、…ああ…服もズタズタだ。」
しかし、目の前の敵は確かに刀身を受けたにも関わらず、受けている傷が浅い。
攻撃が当たっていない訳ではない。
それは、ラトの服が切り裂かれていることや、身体に残る長剣の刃が走ったであろう部分の赤く筋になり、所々辛うじて切り傷となっている事からも解る。
そして黒羊は、けして敵に手加減などしない。
「嘘みたいニ、刃が通らナイ。」
敵から目を反らさず、黒羊が呟く。
「再生が早イ…訳じゃなイナ。」
地面に点々と落ちるそれと傷に滲むほどしか現れていない血を見て劉騎が言う。
それはそもそもの出血量が無いことを示していた。
「敵の能力カナ?防御系の。」
「解らナイ。」
じわりと焦る劉騎に対し、憮然と答える黒羊。
「何にせヨ、…簡単ニハ行かなイゾ。」
冷静な口調で告げつつ、黒羊は苦々しく目を細めた。
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