巡る思い

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巡る思い

橋の欄干にもたれかかりながら、暮れていく江戸の街並みと人々を見渡す。 今日の晩飯は雑炊だよ、だなんて言いながら嬉しそうに橋を渡っていく子供もいれば、重い荷物を荷車に乗せて必死に運んでいく男の姿も見える。 俺はいろんな人が入り交じる雑多な江戸の町が好きだった。 どうして俺が今ここにいるかっていうと、考え事をしたかったからだ。 家にあんまり居たくないって言うのもあるけど。 家は竹屋っていう呉服屋を営んでいて、父ちゃんも母ちゃんもいるし、何も知らない奴から見れば結構幸せそうに思えるかもしれない。 母ちゃんは美人だし、料理もうまいし、優しいし、大好きだ。 でも、問題は父ちゃんなんだ。 父ちゃんは俺や母ちゃんに暴力を振るうばかりするし、柄の悪いチンピラ共と付き合っている。 裏でそいつらを使って取引したり、他の店を潰したり、ろくなことをしていない。 俺はそんな父ちゃんのことが大嫌いだった。 もちろん、父ちゃんのせいで俺たちは周りからの評判も悪い。 でも、評判が悪いのには俺自身にも要因があった。 俺は左右の瞳の色が違うんだ。 金銀妖瞳ってやつだな。 左が黒で、右が赤い。 そんな俺みたいな瞳の色が違う人間は不吉で、魔を呼ぶんだと。 それに、俺は生まれつき狐目ってやつで、それがどうも無意識のうちに相手に威圧感を与えてしまっているらしい。 そんなこともあって、周りからは避けられることばかりだった。 だから俺に友達なんてものは今まで1人もいなかったし、いつもひとりぼっちだった。 内心、歳の近い友達が欲しい、遊びたいってずっと思っていた。 でも、それは過去の話。もちろん、周りからの評判が悪いのは今も何も変わっちゃいない。 だけど、最近生まれて初めて友達ってやつが出来たんだ。
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