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心の欠片
夜も恥らう暗闇に、仄かに瞬く星の一欠片。
宝石の煌めき。無数に散らばる其れ等を二人の少年は拾い集めている。一人はどんなに小さな輝きも残さず集めて天鵞絨の布袋に詰める。一人はまたクズ石か、と呆れ顔で輝きを齧った。
輝く沢山の破片を、硝子盆に鉱水を張り、散りばめる様に沈ませるんだ。そうするとね、夜天の星々が僕の掌中に在る様で、ずぅっと眺めていられる。だから無駄なモノなんて一欠片も無いよ、僕は此の輝きを信じているんだもの。
✴︎
淡い灯の屑石にも齧るだけの価値はあるだろう。唯、拾う価値が無いだけだ。俺はまた成り損ないの輝きを天鵞絨の布袋からザラザラ、流し頬張る。カリッと音がして焦がしたシュガのほろ苦い甘さが広がる。余さず唇を舐めた。
夢か現か解らない世界で、僕は《俺》に逢う。《俺》は僕と星底に幾筋も通る鉱脈で、煌めく欠片を拾い蒐めるのだ。僕に比べて《俺》は口が悪くて、折角蒐めた欠片を屑石と云って片端から齧って食べてしまう。でもそんな《俺》が好ましくて、僕は此の世界を誰にも知られ無い様に錠前を掛けてしまった。
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