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黒い獣は四つ足の弟と見分けられたことを不思議がっていたが
なんで俺が見分けられないと思ったんだろうな?
あの儀式のときに死にかけながら見た、黒い獣の四つ足の姿は忘れられないほど美しかったし、一緒に暮らすようになってから毎日ブラシングをして毛の美しさに磨きをかけている俺をバカにしているのか
俺を見るときの黒い獣の愛情深い瞳と珍しいモノを手に入れようとするズル賢い瞳の差は大きくて、老人の姿であったころに金を騙し取ろうとする奴らと同じような目で見ていたのだ、あの弟は。
愛情など知らない老人のころならば間違える可能性はあったが、今の俺を欺くのは難しいだろう。
それに祝いの挨拶に来たときも俺の事を値踏みするように見てたし、黒い獣から弟の性格の悪さを聞いてたので今日、会いに来たときも驚きは少なかった。
(会ってみて思ったのだが、あの弟はブラコンではないだろうか…)
あの後、弟をどうしたかって?
すこし脅かして帰ってもらったよ、邪魔だし。
でもカワイイだろ?なんの疑いもなく俺の出した料理を食べちゃうし、隠し味を足しといたから今ごろトイレから出られなくなってるかもな。
そんなことして大丈夫かって?
来るならいつでも相手をしてやるさ
……などと考えながら隣を見れば、人にちかい姿で俺を抱きかかえて寝ている黒い獣の唇にキスをして俺も寝心地のいい黒い獣の腕のなかで眠るのだった。
了
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