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 この家に生まれた時から、僕の人生は僕の物では無かった。  裕福で何も不自由のない生活の中に、見えない重圧に押さえつけられるような不自由を感じながら、大きな不満は隠しつつ、小さな反抗をする。  僕は周りが求める理想像からはみ出すことを恐れ、「諦め」を「協調」と解釈し生きていた。  なのに、「恋」をしただけで、僕の人生は僕だけの物になった。  「恋」をしただけなのに、「諦め」は「喪失」に解釈を変えた。  僕が恋をした君は、今も可憐で天使のようだ。  僕は君を手に入れるなら、どんなことでもする。  僕の人生に君がいないなら、いらない。    君と正式に対面したのは、僕が24歳の時。  僕の生家である加神(かがみ)家が代々経営する呉服屋、加々美(かがみ)コーポレーションに正式に入社し、後継者として発表される数日前で、いつになくうるさい夏だった。  加神の本家の応接室で静かに佇む君は、夏の日差しよりも眩しくて、思わず、目を細めた。  「お待たせしてすみません、瀧沢(たきざわ)さん。  改めて紹介します。息子の京祐(きょうすけ)です。外で経験を積ませておりましたが、これからは加々美の仕事に就くことになりました」  普段はどんな相手でもビジネスモードを解くことが無い父が、瀧沢さんと呼んだ品の良いご婦人には、親し気な微笑みを向けている。でも僕はいつものビジネススマイルを張り付けながら自己紹介をした。  「加神京祐(かがみきょうすけ)です。若輩者ですが、瀧沢さんにもご教授いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。」  形式的な挨拶をして、深々と頭を下げる。   「ご立派になられて、これからの加々美も心強いですね。  ご部沙汰しております。瀧沢由枝(たきざわよしえ)です。どうぞよろしくお願いいたします。」  加神家は多くの企業と付き合いはあるが、瀧沢家はその中でも特別な存在だった。それは瀧沢家の家業が深く関係していた。  由枝さんは、初めてお見かけした頃よりもお年を召されて、すっかりおばあさんと呼ばれる年になられたが、凛とした佇まいの和装美人なのは変わらない、むしろ、その円熟した美しさに少し見とれる。  しかし、感情を漏らすことはせず、落ち着いた顔をして澄ます。  「孫の裕姫(ひろき)を紹介します。この子も、これから少しずつ瀧沢の仕事を覚えさせるつもりでおります。裕姫。」  由枝さんの後ろに控えていた、君が促されて前へ出た。  「瀧沢裕姫(たきざわひろき)です。よろしくお願いします。」  大人ばかりのこの部屋に、子供の君はとても不釣り合いではあったけど、物おじするどころか、堂々とした振る舞いが、大人びていて僕は少し興味を覚えた。それは、由枝さんの孫だからという理由も大きかったかもしれない。  「享司(こうじ)さん。こんな時に申し訳ないのですが、折り入ってご相談があるのですが、少しお時間よろしいかしら?」  由枝さんが父にそう持ち掛けると、父が気を利かせた。  「京祐。裕姫ちゃんに家を案内して差し上げなさい。これからここに出入りしてもらう事にもなるだろうから。」  そう言って、僕たちを応接室から追い出した。  僕は言われた通りに、まずは大体の客人にするように、加神家ご自慢の手入の行き届いた日本庭園を案内する。  ほぼ真上にある太陽が、陽を当てている物全てをジリジリと焼いているようだ。  僕たちはそんな中、様々な緑が広がる庭の脇に続く石畳を歩く。  「裕姫ちゃんは幾つになったの?」  一歩前を歩きつつ、差支えの無い話題を振る。  「14歳になりました。」  えっ?  どう見ても、小学生。  背も、170cm後半の僕の半分くらいしか無いんじゃないのか?  もしかして、そのブレザーは、制服なのか?  僕は思わず振り返って君の姿を確かめた。  「そうなんだ。学校は楽しい?」  僕は動揺を悟られまいと、変わらない調子で話を続ける。  「いえ。」  短く答える君の言葉は、さっきと変わらず大人びている。嫌、14歳なら年相応なのだろうか?  容姿と実年齢がまだ一致しないせいか、混乱する。  「そうなんだ。苦手な教科があるからかな?」  しかし、平静を装って会話を続ける。  「勉強は好きです。」  「じゃあどうして。」と言いかけて止めた。  「僕は中学の時、モテすぎて、怖い先輩から睨まれてたよ。裕姫ちゃんは可愛いから、みんなが嫉妬するんだね。」  幼すぎる容姿は、注目を集める。それに君は人形のように可憐な顔をしている。  陶器のような白い肌。大きな黒目がちの瞳。通った鼻筋。何も塗っていないのに、赤く色づいた唇。眉毛の上で切りそろえられた前髪は黒く真っ直ぐで、肩にかかる髪の毛は歩くたびに揺れて、夏の日差しを反射させている。  「学校の話はしたくないです。」  立ち止まり、ハッキリそう言って、僕の目を見た。  何もかもを見通すような眼差しは、周りが期待する理想を演じている僕には痛かった。  「そうだね。じゃあ、夏は好き?」  僕も立ち止まり、誤魔化すように空を仰いだ。  「嫌いです。」  「暑いから?」   「うるさいから。」  そう言って、僕と同じように空を見た。  あぁ、そうだね。夏はうるさい。  聞きたくない声が、耳をふさいでも聞こえてくる。  「でも、ここは静かで、いい。」  そう言って目を閉じた。  14歳には見えない幼い容姿。小さな子供が声少し背伸びをしてコスプレしている様にしか見えない制服。少女なのに大人のような落ち着いた空気。それから、汚れを嫌うような真っ直ぐな眼差し。  僕の視覚と感覚はエラーを起こしていて、君をまだ正確に理解できていない。  唯一理解できているのは、君の姿は美しいと言う事だけ。  いつの間にか思考は止まり、君に見とれてしまっていた。  「でも、暑い。」  君は僕の視線を気にする事も無く、くるりと方向を変え母屋の方へ歩き出した。  「あっ、何か冷たい物でも…。」  急に子供じみた行動をとる君の後を追う。  何だろう、この振り回されるような感覚。  新鮮で、ちょっとワクワクしてきた。  「京祐さん。」  母屋に入ると直ぐに声を掛けられた。   「はい。お義母さん。」  僕が15歳の時に後妻に入った義母だった。  「こちら、瀧沢さんのお孫さん?」  「はい。」  「瀧沢裕姫です。」  君は相変わらず大人びた声で、きちんとお辞儀をして自己紹介をした。  「加神の家内の(たまき)です。」  笑顔で言葉を交わすと、君の前にかがみ込んだ。  「きっと、裕姫さんにだと思います。和室に着物が届きました。」  下から僕に振り返り、妖艶に微笑む。  「ありがとうございます。行きましょう、裕姫ちゃん。」  丁寧に頭を下げ、君の手を引いてその場を離れる。  妖艶な父の後妻を、僕はどうも好きになれないでいる。  僕の気持ちを察してか、君は僕に手を引かれるまま、黙って付いて来る。  庭に面した和室に、着物が入れられた包みがぽつんと置かれていた。  ほどいて中を確認すると、涼しげな紺色の単衣物(ひとえもの)だった。  「お(かいこ)様。」  向かいに座り、着物にそっと触れている君が呟いた。  「知ってるんだね。」  着物を見つめたまま、無言で頷く。  お蚕様。  それは、蚕の神様。  お蚕様の作る絹糸には力が宿っていて、この世のものではないモノと対峙する法衣として、加神家が代々作り続けている着物だ。  加神家には老舗呉服とは別の裏の家業がある。それは、お蚕様が創り出す特殊な糸を扱う秘密の呉服屋。  瀧沢家は、この世のモノではないモノと対峙する祓師(はらいし)の家系。  君が言っていた様に、夏がうるさいのは、この世のモノではないモノが増える季節だから。聞こえる僕たちには蝉の鳴き声よりも不快な暑さを覚える。  僕は加神には珍しく、見える力を持っている。でも、それだけ。  君は今、どこまでの力を持っているんだろう。  「似合いそうだね、着てみる?」  着物を君に当てて、聞いてみた。  君は少し考えて、着物を見ながら言った。  「でも、お襦袢や帯が無いから…。」  初めて感情が乗った声を聞いた。  嬉しそうな、恥ずかしそうな、高揚。なのかな?  僕は嬉しくなって、君にこの着物を着せたくなった。  「姉の物でよければ、合うものがあるはずだよ。探してみよう。」  2歳上の姉は、すでに嫁いでこの家にはいない。  出来上がったばかりの着物を抱えて、続きにある衣裳部屋へと君を(いざな)った。  加神家の着物が収められているこの部屋は、全ての壁に面して桐ダンスが置かれている。その中から、しばらくの間、開けられていなかった引き出しをいくつか探る。  サイズが合いそうなお襦袢をいくつか見つけた。お帯は、白地の中幅の袋帯。帯揚げと帯締めは白地に薄紫の入った物を選ぶ。  足袋や着物用の下着も探し出して、一式揃える。  「じゃあ、着ようか。」  僕が探し物をしている間、大人しく正座をしていた君は、コクンと頷いて立ち上がり、ためらいも無くブレザーを脱いだ。  リボンタイを外して、靴下を脱ぐ。  足袋を慣れた手つきで履くと、シャツのボタンを外しだした。  子どもに着付けをする感覚で、分からない事が無いようにと、君の挙動を目で追っていた僕は、シャツの胸元が露わになっていく様に驚いて後ろを向いた。  幼い容姿とは裏腹に、君の胸はグラビアアイドル顔負けの膨らみがあった。  そうだ、14歳って、身体は大人に成りかけてるんだった。  僕は今日一番の動揺を隠しきれないまま、後ろを向いて君に話しかける。  「着付けはどこまでできるの?」  布ずれの音と一緒に聞こえてくる君の声に耳を澄ます。  「最後まで着られますけど、道具がいつもと違うから…。」  「じゃあ、お襦袢まで着たら教えて。」  「はい。」  14歳とはいえ、僕にとってはまだ子供の君の体に、不意とはいえ、動揺している自分に驚いた。  女の身体なんて見慣れているし、扱い方も分かっている。僕はモテる条件が揃っている大人の男なのだ。  身長178㎝。体重65㎏。スーツが似合う体型に、無駄は無い。  目は涼しげな奥二重、鼻筋も通っていて、形のいい唇は見た目よりも柔らかく、よくキスをせがまれる。  それに、一流大学を卒業後、海外留学を経て、業界最大手の会社を将来背負って立つ経済力。  足りないモノなんて何もない。  そんな僕が、14歳の子供にドキドキしてどうするんだ。  「出来ました。」  自分に語りかけていたので、その言葉に驚いて、肩を上げて驚いてしまった。  落ち着いたはずの心をまたかき乱されて、振り返る。  一番に目が行ったのは、大きな胸だった。  露骨だったのか、それに気付いた君は手で胸を隠した。  「押えるものが無くて。」  あぁそうだ。君の胸がそんなに大きと思っていなかったから、何も用意しなかったね。  僕は表情を引き締めて、君の前に跪くと、お襦袢のひもを解き、脱がせる。  君は少し驚いて体を固くしたが、僕の行動が至って業務的なものだと分かると、警戒心を緩めて身を任せた。  僕たちは言葉を交わすこと無く、ただ静かに布ずれの音を聞きながら着付けを進めた。  まず、寸胴のワンピースの様になっている着物用の下着の胸から這わせてすぐ下に、伊達帯を巻いた。胸がこれ以上流れないように、しっかりと締めるのと、伊達帯の厚さでアンダーバストを少しでも埋めるためだ。  そして、お襦袢を着せ、しっかり襟を抜き、もう一本の伊達帯で締める。  ウエストは細いのに、お尻はしっかりあって、身体のラインはもう大人だった。そんな風に君の体を観察したのは、着物を綺麗に着せるためであって、変な意味は無い。  僕が今の君と同じ年の頃、将来描いていた夢は「着付け師」だった。  姉が継ぐものと思っていた加々美を着付け師として支えて行こうと密かに計画していたのだが、姉は海外留学先で外国人と恋に落ち、そのまま結婚してしまい、駆け落ち同然に加神の家を出てしまったのだ。  破れた夢にまだほんの少し憧れを持っているだけに、着付けをする時は邪な気持ちは持ちたくない。  それに、僕の性の対象は、大人の女性なのだ。  14歳が僕の相手になる訳が無いだろ。  誰か見ているわけでも無いのに、誰かに言い訳をするように自分自身に言い聞かす。  なのに、帯が締めあがり、最後に帯締めを結ぶと、予想より遥かに綺麗な君がいた。  「出来た。」  仕上がりに満足しながら、声をかける。  「素敵。」  姿見に映る自分を見て、はにかんで言った。  初めて見た笑顔は、花が咲いたようだった。  「ヘアーメイクもしてみる?」  君の笑顔がもっと見たくて、訪ねる。  「いえ。これ以上は。」  真顔に戻り、感情を殺す。  「でも、この着物は襟足をすっきりを見せる方が綺麗だと思わない?」  そう言って、君の髪を手で束ねて持ち上げた。  鏡に映る君を二人で見る。  細い首が露わになり、着物が一層涼しげに見える。  そして何より、洋服を着ている時には感じなかった、瑞々しい色気が幼いながらに溢れてきた。  君はコクンと言葉も無く頷くと、鏡越しに僕の目を見た。  僕は目が合っただけなのに、胸が高鳴った。  だけど、それを誤魔化すように、髪飾りを探しに行く。  鼓動が早まった自分の心に、また言い聞かすように何度も呟いた。  だから、まだ子供だ。  そして、少し落ち着いた頃合いを見て、涼しげなガラスのかんざしを見つけると、鏡の前の君の元へと戻った。  君は僕を待つ間、鏡に映る自分のすべてを見ようと、身体をひねっていたようで、一瞬見えたその姿は、本当に愛らしかった。  着物姿の天使が舞い降りたようだった。  もっと見ていたかったけど、君は僕が戻ったことに気付いて、直ぐに鏡に向かい正座をした。  「簡単な事しかできないけど、かんざしは良いのがあったよ。」  君の真っ直ぐな髪を櫛でまとめ、左耳の後ろに一まとめにして、ゴムできつく縛る。ゴムを隠すように束ねた髪を巻き付けてヘアピンで止める。流れ落ちる髪はそのままにして、後ろにかんざしを挿す。  簡単ではあるけど、かえってそれが、こなれた感じになっていい。  「出来た。」  手鏡を後ろにあてて、結いあがった髪を鏡越しに見せる。  君が嬉しそうな顔をしたから、僕も微笑んだ。  急にくるりと正座のまま、僕の方に向き直ると、手をついて頭を下げた。  「ありがとうございます。」  その仕草は、洗礼されていた。  「ここにいたのか。」  襖が開くなり、父の声が背中に届いた。  振り返ると、由枝さんも一緒だった。  「あっ、はい。」  間抜けな返事をしてしまい、チラリと君を見た。  君は正座のまま、真っ直ぐ父を見ていた。  「その着物、良く似合っているね。瀧沢の仕事を修行なさると聞いたので、急ぎ、作らせた。私からのプレゼントです。」  父が君の前に立ち、手を差し出した。  君は手をのせると、立ち上がり、由枝さんを見た。  「そんな高価な物、頂くわけには参りません。裕姫には私の着物を仕立てなおして着せるつもりです。お気持ちだけ頂戴いたします。」  由枝さんは、丁寧に断りをいれた。  「しかし、もう仕立ててしまいましたし。」  父は困った様子も無く、君をじっくりと見た。  「この着付けは、京祐がしたのか?」  「はい。」  緊張しながら答える。  「いい物を選んだな。」   「ありがとうございます。」  「では。裕姫ちゃんには、ウチのモデルになってもらい、そのギャランティーでこの着物をお買い上げ頂くというのはどうです?」  父の突然の提案に一同は虚を突かれた。  「モデル?」  君が小さく呟く。  「そう。今、お願いしている少女モデルが成長してしまってね、裕姫ちゃん位の背格好の子を探してたんだよ。どうだろう、やってみないか?」  父は君を覗き込んで提案する。  「いえ。裕姫にはもったいないお話です。それに、世間様にむやみに顔や名前をさらすのは、ウチの仕事に支障をきたしますので。」  「顔は化粧で何とでも変わりますし、名前は本名を出さなければよいのです。それに、モデルと言っても、ウチのカタログやカレンダーに載る程度です。」  「それなら、なおさら、裕姫で無くても…。」  父も由枝さんも食い下がらない。穏やかに言ってはいるが、父はもう決めているのだろう。君をモデルにすることを。  僕はその意見に賛成だ。  加々美の着物をこの年で、こんなに綺麗に着られるのは、君の他にあと一人。姉の京迦(きょうか)しかいない。  「私、ここまで上手く自分で着付けられません。」  どちらも引かない大人二人の間に、君は堂々と割って入った。  「自分で着ることは無い。着付け師がやるんだよ。」  「でも、今の私は、普通の人では無理です。」  「あぁ、そうだね。京祐はどうだった?」  「大丈夫でした。でも、このお屋敷の中だからかもしれません。」  「そうか。それなら今度、違う場所で試してみよう。」  二人の会話は、理解できないところがあり、僕の名前が出てきたところで、何を言われているのか分からなかった。  「裕姫。出過ぎたことを。」  由枝さんがキツクたしなめる。   「私、この着物が欲しいです。でも、おばあちゃんが言ったように、このような高価な物をプレゼントして頂くわけにはいきせん。  私の為に作られたのに、お返しすることもできません。でしたら、おじ様がおっしゃったようにしたらいいじゃない。  私は加々美の着物が好きだし、写真を撮られるだけでしょ?」  意外な言葉が君から発せられて、僕の気持ちは付いて行けない。  「じゃあ、商談成立ですね。瀧沢さん、心配しないでください。私が責任をもって裕姫ちゃんをマネージメントしますから。」  由枝さんは珍しく苦々しい顔をして、言葉を飲み込んだ。  父の勝ちだ。  こうして君は、父の思惑通り加々美の専属モデルとなり、僕は君専属の着付け師になった。  後に知らされたのだけれど、この頃の君は祓師としての能力が開花し始め、コントロールが難しくなり、お蚕様の力が無くては、触れるモノ全てを祓ってしまうようになった。それは、霊だけでは無く生きている人間にも共通して、君に触れると弾かれたようにな感覚を覚え、時としてケガをさせてしまう事もあったようだ。  そんな事が続き、まだ中学生の君は段々と人と関わることが怖くなり、何処にいても孤独を選ぶようになっていた。でそれも、お蚕様で作られた組紐のブレスレットをはめる事でその力は抑制されるようになったけど、閉ざした君の心はそう簡単には開かなかった。  でも君は、僕に祓師の力が及ばないと知ると、ホンの一時だけ心を開いた。  あの時の君の素直な笑顔は、僕の心まで素直にしてしまった。  そして、あの時の君に感じた胸の高鳴りは、恋なのだと。14歳の少女に恋をしてしまったと、素直に認めてしまったのだ。    
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