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「江戸に来たからには吉原に来ないと」
そう豪語する男はここ、棗楼にやって来んした。歳は二十ほど。おそらくどこかの大店の息子でありんしょう。大層羽振りがよいらしく、やり手はすぐさまお職になりたてのわっちを勧めんした。
客の名は律。この変わった名の客は歌舞伎役者の女形のような顔をしていんした。
「あなたが藤風か」
わっちは目を合わせず善のものを食べていると相手は苛つきはじめんした。
「こっちも見ないのか。おい、こっちは金を払っているんだぞ。料理が不味くなる。こっちを見ろ」
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