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「人じゃなくて花だろ……悪かったよ、返事しないで。もうぼくは幻覚と話せるぐらい終わってる人間なんだって思い出せた」
ぼくの自虐はユリにスルーされる。
「だったら、ちょうどいい。私の悩みを聞いてくれないか?」
「……花に悩みなんてあるのか?」
「あるさ……聞いてくれたまえ」
植物に悩みなんかあるわけない。そう思っていたいものだが、ユリは気にせず話している。
「さきほど私に花言葉はないと言ったな。そこなんだ。君も言っていたことだし例として青いバラを出そう。青いバラの花言葉は「奇跡」「神の祝福」そして「夢かなう」だ。なんて素晴らしいんだろう。青いバラを開発した方々の想いがひしひしと伝わってくるではないか。泣くかわりに蒸散して涙の称賛をおくろう」
花から水滴がおちる。たぶん蒸散したのだろう。ずいぶん器用な花だな。ぼくの感想は気にせずユリは真面目なこえで続けた。
「で、私は?」
ユリはまっすぐぼくを見つめてくる。ぼくはこの話になんて返せばいいのだろう。無言の返事も時にはゆるされるのではないだろうか。そんな思いが伝わってしまったのか、青いユリは不機嫌そうにしている。
「……なんだいその表情は。まったく、私の創造主は私に笑顔以外の表情を見せたことなんてなかったのに……」
ユリはブツブツ言い出す。その様子を見てパッと思い浮かんだ文字をつげた。
「つまり花言葉がほしいんだな? だったら良いのがある。「傲慢」とかいいと思うよ」
「君は血も涙もないやつだな。ってそれは私か、はっはっは」
もしかしてこいつの花ジョークは永遠と続くのだろうか。ユリはぼくの嫌味な目線を適当に流してしまった。
「小粋なジョークはさておき、君はこの事態をどうとらえる?」
「べつに、ユリの花言葉なんていくらでもあるじゃないか。それでいいだろ」
「君はわかってない! バラは色や本数にだって言葉があるんだぞ! なのに私は、ユリ全般の花言葉で我慢しろっていうのか! 大体ほかのユリの色にはしっかり言葉があるのに……! 君こそ「傲慢」だよ!」
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