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「……今は、令和だよね? 江戸時代とかじゃないよね?」
「ぼくが生まれたのは平成。いつも親からも同級生からもいじられるよ、名前の通り二番手って」
「気の毒だな」
「名前なんてそんなもんだよ。花言葉だって変なものも多いじゃないか。ひどいことをつけるよね。言葉で意味を見出すなんてばかげているんだ」
自分が子供っぽい単純な思考回路をしているなんて自覚はある。花はぼくの言葉を聞き終わってすぐに口を開いた。
「私はそうは思わないさ」
その言葉もユリの思いも、芯の通ったもの。そう感じずにはいられない声。それは、表情はわからないくせに、そんな顔をできるのかと思えるような大真面目な声だ。
「それに先程から言っているとおり、私は自分で花言葉をつけることができるんだ。幸福だよ。そもそも花言葉は、大昔貴族が愛しい人に花を送る際に意味合いができるようつけられたそうだ。つまり私も君も貴族と同じことができる花と人間ってことになる。素敵だねぇ」
「なんだか、ロマンチックだな」
「君にもこのロマンがわかるとは、見直したよ」
「……そりゃあどうも」
ユリの発言はどれもこれも楽しそうだ。うっかり人間であるこちらが嫉妬してしまうぐらいに。
「自分の人生……花生の言葉を見つけ出せるのは確かに羨ましくはあるけどさ」
ぼくの言葉にユリはポンと手を打つ。
「そうだ、だったら君にも言葉をつけてやろう。ちょうど練習にもなるしね。名付けて人間言葉だ」
ユリの突拍子もない言葉に思わず立ち上がってしまった。
「は、はあ……!? なんか、ぞわっとするネーミングだな……」
「だが、分かりやすいだろう」
「でも、ぼくはそんな言葉をもらったって使えないよ。プレゼントの時のために花言葉は存在するんだろ? ぼくは物じゃなく、人間なんだから……」
そこでつい、言葉が出なくなった。ユリはぼくの反論を聞かず、色々と単語を口にしてぼくの人間言葉を考えている。
そんな様子をみていると、どちらが人間なのかわからなくなってくる。
さっきからただ否定して聞いているだけのぼく。様々な事柄を覚え、考え、花言葉を欲しているユリ。
どちらが自分の考えを持っているかなんて、こどもでも「ユリ」と答えるだろう。そう思うと自分がひどく情けなくなってきた。
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