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「ヒッ……!」
原先生が息をのむ音が聞こえた。
本来はグレーに見えるはずのコンクリートの道路が、赤黒く染まっていた。
見覚えのある女性が、不自然に横たわっている。
手があらぬ方向に曲がり、結んでいた髪はほどけて黒い塊となっていた。
「す…須藤先生……」
そう呟き、原先生はどこかへ走り去っていった。
俺は視線をそらし、
「屋上の…鍵は……」
と佐伯先生に聞いた。
それに先生は答えず、中村先生がまたも首を振った。
俺はその意味が分からず、職員室に駆け込んだ。
各教室の鍵がかかっているその横に、屋上の鍵もある。
___そのはずだった。
「………ない。鍵が…ない」
廊下に出て叫ぶ。
「中村先生が来たときには、もうなかったということですか!?」
中村先生は、こくり、と力なく首を縦に振った。
さっき首を振ったのはそういうことだったのか、と納得すると同時に思う。
誰が、どこに、どんな目的で………!?
俺の気持ちを読み取ったかのように、佐伯先生が言った。
「犯人の仕業、ですかね…。というか、それしかないですよね。こんな、わざわざ鍵を盗むだなんて」
「ええ、まぁ、そう考えるのが妥当でしょうね。……でも、きっと違うと思います」
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