中編

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俺はその日のうちに敦を呼び出し告白をした。敦は少し戸惑ったように俺を見上げて尋ねる。 「でも涼真さんには恋人いますよね」 気づかれていたことに驚きつつも、それを気にしている敦をうれしいと思ってしまう。 「別れたんだ」 「え?」 敦が本気で好きになった、だから恋人とは別れたことを説明する。敦はそうですか、と笑って続ける。 「僕も好きですよ、涼真さん」 「それじゃあ・・・」 「ああ、勘違いしないでください」 思わず抱きしめようと伸ばした腕を払いのけられる。いつもの笑顔がどうして今日は怖いと感じてしまうのか。払いのけられた手が想像以上にショックだった。 「確かに僕は涼真さんが好きでした、でもそれはつい先ほどまでの涼真さんであって、今のあなたにはなんの魅力も好意も感じないです」 「それは一体どういう・・・」 敦はにこりと笑って答える。 「僕はね、昔から人のものが好きなんだ。おもちゃもお菓子も、自分の分が用意されていてもいつも人のものが欲しくなる。同じものでも人のものが良く見える。とりわけ恋愛に関しては恋人から奪う過程にひどく興奮する。誰かのものである人がその誰かを捨てて自分を選ぶという行為に堪らない優越感を覚える」 はあ、と恍惚とした表情でそう語って興奮した様子で頬を上気させる敦に瞠目する。 この男はいったい誰だ、俺の知る敦はこんなことを言わない、こんな表情をしない。いつも純粋で素直で可愛い敦がこんなことを言うはずがない。 俺はあまりの衝撃にふらふらと後ずさる。 「でも少し気になってることがあるんだ」 逃がさないとでもいうように俺の腕をつかみ敦は俺に歩み寄る。 少し前までは敦の掌が触れていることに舞い上がっただろう。この距離に歓喜しただろう。けれど今の俺にはただひたすらに自分より小さな目の前の男に異様な恐怖を感じていた。 「僕が見る限り君と君の恋人は今までみたどんな恋人関係(カップル)より冷めているように感じたのだけれど。本当に付き合っていたんだよね?」 俺は頷く。形ばかりの関係だった。ただ俺が一方的に想いを享受し利益を得るような関係だった。それでも俺たちは付き合っていた。例え人に誉められるような関係ではなくても。 「君達に会えるのを楽しみにしていたんだよ、僕は。大学に誰も仲を裂くことができない二人がいると聞いていたから」 さもがっかりだと言わんばかりに敦は肩を落としてため息をつく。その姿に俺はただ愕然とする。 出会ってすぐに敦は友人グループの中でもとりわけ俺によくなついた。それは俺にとって堪らなくうれしかったのだ。しかしそれさえもただの幻想だったのかとうなだれる。 「・・・誰に聞いたんだ?」 そんな根も葉もないうわさの流出源を問う。俺をよく知るものならそんな可笑しな噂を敦に吹き込むはずがない。
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