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プロローグ
少し前から大学内で密かに囁かれる「別れさせ屋」の噂。それはその名の通り、頼めばどんな二人をも別れさせてくれるらしい。しかしその正体は分からず、どうすれば会えるのかもわからない。
こんな七不思議にも似たバカげた噂が気になるのは俺の恋人である藤原 涼真が浮気をしているからである。浮気相手と恋人を別れさせるために別れさせ屋に頼るなんて一般的には理解されないかもしれない。しかし、俺と涼真の関係は皆が思うような恋人関係ではない。
高校で俺と涼真は出会い、俺の一方的なアプローチに絆される形で涼真は俺との交際を承諾した。しかしその関係を周囲にカミングアウトすることなく、付き合ってからも涼真と俺の関係が変わることはなかった。もともと特別仲の良い友人関係であったわけでもない。涼真も俺に親密な関係を求めていないことは明らかだった。
涼真は魅力的で、彼女がいない時期がないと言っても過言ではない。短いスパンで一人と付き合っては飽きたら別れ、その噂を聞きつけた別の女生徒とまた付き合う。この習慣は俺と交際しても変わらない。もともと俺が頼み込む形で仕方なしに付き合ってもらっている関係だ、文句はない。それに、涼真が彼女たちに本気にならないことを俺は分かっていた。
涼真は誰にも執着しない。当然それは俺との関係においても同じだが、それが俺にとっては好都合だった。誰も執着しない涼真だからこそ俺は安心して恋人の肩書きに酔いしれた。涼真が他の誰と付き合っていたとしてもすぐに別れることを知っていたから。
大学も当然俺は涼真と同じ大学を受け、涼真の隣の部屋を借りた。涼真は気が向いたときに俺の部屋に来た。それが例え性欲処理の目的であれ、食事の目的であれ、レポートの代筆であれ構わなかった。ただ必要とされることがうれしかった。
大学に入っても涼真は変わらない。誘われれば誘われるがままに誰とでも体を重ね、飽きたら別の女性の手を取る。その繰り返し。それでも涼真は皆の憧れの的だった。皆一夜でも涼真との関係を求めた。それが許されるほどに涼真は魅力的だった。
俺と涼真の関係も変わらぬまま、月日は流れ、俺たちは二年になった。
俺たちの関係はこれからも変わらず続いていくものだと信じていた。そうであってほしいと俺自身が一番願っていた。
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