エピローグ

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エピローグ

「おじゃまします」 そう言って今日の昼僕の家にやってきた柚希は少し緊張した面持ちだった。僕はそんな柚希を「いらっしゃい」と笑って出迎える。 まだ柚希から明確に告白の返事をもらったわけではない。答えを急ぐつもりもない。けれど、何にたいしても真面目で不器用な想い人は放っておくとネガティブなことばかり考えて思い詰めてしまうに違いないのだ。 だから少し強引だとは分かっていながらも家に来るように促した。本音は同居したいところなのだが、さすがに敷居が高かろうとまずは数日間のお泊まりということで柚希も納得した。 食器など必要なものはこれから少しずつ二人で買い足していこう。未来の約束事はなんだかくすぐったくて幸せだった。 これからは困ったことや悩みごとは思い詰めず、相談することを柚希に約束させた。困難は二人で乗り越えよう、そう言えば柚希は素直に頷いた。   しかしお泊まり一日目の夜、さっそくとある問題に直面する。 「俺がソファで寝る」 僕が何か言う前に柚希がそう言い切ってソファに向かう。そんな即決なところも男らしくて好きだけど、さすがに引っ越し早々ソファで寝かせるなんてことはしたくはない。幸いベッドは大きいし、二人で寝ても問題はない。柚希をソファで眠らせるなんて不安で眠れないと訴えると柚希は渋々折れてくれた。 「近すぎないか」 「普通だよ」 柚希の文句を強引に言いくるめて僕は柚希の体を抱きしめる。最初はもぞもぞと身じろいでいたがしばらくして柚希はそのまま寝息を立て始めた。 * 「僕はね、大切なものは誰にも触らせないように見られないように仕舞い込むタイプ、かな」 いつかの会話を思い出す。 すやすやと寝息を立てる柚希にそっと微笑んで、その額に口づける。 宝物は誰にも触らせない、見られない、僕の腕の中。 【宝物(幸せ)の在処 《終》】
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