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彼がいたずらっ子みたいに笑って、私の鼻の頭をぺろりと舐めた。 妙なくすぐったさにふふっと声を漏らして、私も同じように彼の鼻を舐めた。彼もククッと喉を鳴らして、今度は頬に舌を滑らせる。 その熱い舌は耳の穴まで犯したあと、首筋を這って、鎖骨を舐め回す。私は彼の骨ばった長い指を口に含んで、一本一本ゆっくりと味わっていく。 とっくに裸んぼうの私達は、そうやって互いの隅から隅まで舐め尽くす。毛繕いし合う猫みたいに丸くなって、ぺろぺろぺろぺろ。背中も脇もおへそも、アソコも、足の指までも。 間接照明に照らされた仄青い暗がりは、まるで小さな小さな宇宙。互いの骨の髄まで舐め尽くした舌と舌を合わせれば、もう呼吸もできなくなる。 宇宙にふたりきり。快楽という星の海で溺れながら、互いの存在を確かめるように、なにもかもを求め合い、ひとつに混ざり合う。 私は彼で、彼は私。彼の律動は私の鼓動。私の吐息は彼の酸素。体温はぴったり同じ。境目なんてとっくにトロトロに溶けてなくなった。 私達、お互いがいないと生きていけないんじゃないかしら。少なくとも私は、あなたがいないと死んじゃうかも。 無重力みたいにフワフワな頭でそんなことを思いながら、果てるまで、何度も何度も彼の名を呼んだ。
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