執着

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 戻ってきた姉の手には分厚い茶色の封筒がある。 「お金、必要でしょ」 「あ――」  本来の目的を思い出し姿勢を正した。生活費が底をつき姉に助けを求めに来たのだ。 「ほんとは先に連絡って思ってたんだけど、繋がらなくて」 「ごめんね。私携帯電話壊しちゃって今手元にないの」  封筒の中を見ると諭吉がぎっしりと入っていた。 「え、ちょっとこんなには」  うろたえるといいのよいいのよと姉は言った。 「もともとあなたのためにとっておいたお金なんだから、遠慮なく使って」 「……ありがとう」  次のバイト先が決まるまでの生活費だけあればよかったのだが、申し訳ないがもらえるに越したことはない。自分の鞄の中にしまった。 ――コツ、コツン。  その時何か小さなものが階段から落ちてくる音が聞こえた。足元までゆっくりと転がってきたそれを親指と人差し指でつまむ。オレンジ色の小さな球体。 「姉ちゃん、BB弾の玉だよ、懐かしいね」  振り返った姉の表情は先ほどまでの微笑みが嘘のように消えていた。
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