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「二階から落ちてきたみたいだけど……」
俺の腕を掴んだ手は氷のように冷たかった。
「……姉ちゃん?」
――ザアアー。
窓に叩きつける大雨のような音と同時に、今度は大量の玉が二階から流れてきた。オレンジだけでなく水色も白や黒、透き通ったものまである。姉が息を呑むのが聞こえた。
「そういえば、姉ちゃんよく集めてたよね」
子どものころの話だが、あまりゲームやおもちゃを買ってもらえなかった俺に提案してくれた遊びが玉集めだった。BB弾をもっていない俺たちは実際どうやって遊ぶものか知らなかったが、石よりも綺麗なものをたくさん集めるという行為に夢中だった。姉は遊んだ後いつも嬉しそうにお気に入りのお菓子の缶にしまっていた。
「だいじょうぶ、だいじょうぶだから」
姉は嬉しそうな悲しそうな顔をしたまま、俺を力いっぱい抱きしめた。
階段の上にはぽつんと中身が飛び出してしまったパンドラの箱のように姉の缶が開け放たれて置かれていた。その奥に薄暗く続く廊下が見える。
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