忿怒荒神

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 山々の紅葉が始まる頃、俺はちょっと足を延ばして飛騨温泉郷に属し蒲田川の河原にある荒神の湯にまたやって来た。  料金箱に200円を入れろと書いてあるが、これは志としてであって強制的ではなく金を入れるとゲートが開くシステムである訳でもなく手動のドアを開けるだけだし、無人営業だから金を入れなくても入れることは入れる。  岩に囲まれた露天風呂の他には脱衣場があるだけなのだ。  但、防犯カメラが設置してあるから確認されてはメンツにかかわると料金箱に金を入れるふりをして入るせこい俺。  俺は生来ドケチなしょうもない親爺なのだ。  脱衣場に入ると、棚に沢山用意してある籠は一人しか利用していないのが分かった。  見るからに貧苦に喘いでいるのが窺える粗末な衣服。  今日はあのいつも陰で貧乏神だの頑固爺だのと悪態をつかれ仏頂面でいる爺さんだけかと俺は嫌な気がしながら脱衣場を出た。
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