ルーティーンの時間1

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ルーティーンの時間1

僕は今、自分の音を奏でる 何度も鳴っていたアラームと共鳴するように「空あ!」という彩の甲高い声が、耳元で響いたような気がした。 僕は、重い瞼をを重力に逆らいながら開けた。フルスピードで身支度をし、朝食をとり、髪に軽くワックスをつけ玄関に急いだ。 急ぐのは、当然、彼女が彩がいるからだ。 扉を開けながらふざけて、「あっぶねぇ遅れるところやった」と言うと「危ない超えとるわ!」と優男な大地からケツを叩かれて、それを見て笑う彩。 これが僕のいつものルーティーン。いつもの僕の風景だったんだ、これが この「青」がいつまでも続くと思っていたんだ。 登校しているとき、朝停めていた自転車が野良猫にひっかかれてパンクしてしまったという大地に歩幅を合わせながら、テストの結果とか、小テストの範囲とか、担任が面倒臭いとか、他愛もない話をしながら 駐輪場についた。自分の教室に入るまで僕達は3人で廊下を歩いた僕達は3人とも違うクラスだ。青春ドラマや漫画だったら、 3人とも同じクラスだったろうにと思いながら頭はスッカラカンなまんまで、授業を受けていた。先生はぼくのそんな怠惰な心を見透かしたように、「よーし、じゃあ次のけりの活用形15番のお前」 と当ててきたのだ、よりによって教科で1番怖い古典の一湊先生だった。 オドオドしながら答え、何とか正答した、周辺の皆も安堵の表情をしている。思わず、 「ふぅ」と自慰をした時の様な声を出してしまい、皆の笑い声を抑えている響と頭上から1点の光線のような瞳と目が一瞬合ったが、多分光よりも早いスピードでそれを避けた。何とかやり過ごせた。 古典の時間が終わり、クラスの皆と先程のことについて談笑しあい、昼休みを迎えた。 昼休みにも、朝と同様ルーティーンがある。 僕は当然、彩と大地とご飯を食べることにしている。 だがここで一つイレギュラーな問題がある。 古典の小テストは毎日あって、いつもは頭の良い大地が出そうな所を休み時間にわざわざ教えにきてくれるのだが。今日はとんでもない下痢だったらしく教えて貰えず当然不合格だった。しかもこの小テストは間違えた物を昼休み中に訂正して、再提出しないといけないのだ。これは、かなり面倒臭い、「まあ自分が悪いのだが…」だから、2人と会うのは少し遅れてしまうことになった。 一湊先生のデスクに、古典の再提出の小テストを出した時、職員室のすぐ近くの音楽室から、ポロンと綺麗な音が聞こえたような気がした。そんなものは今どうでもいいのだが、 妙に心に残った。 早く2人に会いたいという気持ちが、足に現れていて気づかないうちに、全力で走っていた。 ここで、漫画的な展開だと屋上にダッシュということになるのだが、僕達が昼食をとるのはベランダだ。ベランダに着くと2人は、 打ち合わせをしていたかのように「遅ーー」 と語尾の長さまで合わせて言ってきた。弁当箱はいつも2人とも開いていなくて、僕をいつでも待ってくれていたような気がして嬉しかったのだが、今日は2人とも何故か開いていた。まあどうせ2人のことだから お腹が減ったんだろうと思いながら、2人の真ん中に座った。今日、授業であったことをお互いに喋りあい、一湊先生のことを、話すと2人は爆笑していた。この時間は本当に、幸せだった。 弁当を食べあげると、ちょうど次の時間が始まる5分前だったので2人に別れをいい自分のクラスに戻った。昼からの授業は、音楽.家庭科.体育という1週間に一度だけの最高の流れだったので、クラスの友人たちと楽しく過ごした。 授業が終わると、終礼を済ませて、足早に2階の社会科教室に向かいグラウンドを見下ろした。大地と彩は部活をしている。大地はサッカー部でその顔立ちから、女子のファンもいる。彼女を作らないのかと最近聞いたが、 どこかバツの悪い顔をしていた。彩は、陸上をしていて、インターハイに出るほどの足の速さをしている。ついでにここから見ているのは、僕だけの秘密だ。 僕には何も特技も趣味もないので、何かに打ち込んでいる2人はほんとにかっこいいと思った。
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