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「大丈夫だから。しっかり温まって出ておいで。」
ドアを閉め、受話器に耳をあてる。
『聞こえていたわよ。』
くすくすと笑う母の笑い声。
「お願いします。」
その後、待ち合わせを決め、電話を切った。
リビングのソファでメールをチェックしていると、頭にタオルを巻いた柚葉が何やら不安げな顔でリビングの入口に立っている。
駆琉がポンポン、とリビングのソファを叩くと柚葉は、てくてく歩いてちょん、と駆琉の横に座った。
「なんだ、髪、まだ濡れているな。」
「ん…。」
駆琉は立って、延長コードとドライヤー、ブラシを洗面所から持ってきた。
「乾かしてあげるよ。」
「え?」
「こう見えて、結構器用なんだ。」
柚葉は俯いた。
「知ってます…」
そう答える耳が赤い。
風呂上がりの柚葉は、なんだかふわふわしているし、いい匂いだし、このまま、またベッドに連れ込みたくなってしまうけれど、それをなんとか抑えて、駆琉は柚葉の髪を後ろから乾かす。
「ん?どうした?急に親とか、驚いたかな?」
「はい。えっと、ご挨拶に伺わなくては、とは思っていましたけれど、突然だったので。」
「嫌なら、断るよ。」
柚葉に無理はさせたくないから。
柔らかくそう言うと、柚葉は一生懸命首を横に振る。
「っ…違います、あの、…すごく、緊張する…。気に入って頂けなかったらどうしようって。この前の駆琉さんもこんな気持ちだったんですね。」
まあ、柚葉よりは大人なので、そこまでではなかったけれど。
「そんなに緊張しなくていいよ。柚葉のご両親の方が余程驚いただろうに。俺はもう、適齢期だからね。」
それより、そんな人がいるなら早く会わせて欲しい、が家族の本音なのは間違いのないところだ。
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