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駆琉としては、聞かれても全く構わなかったのだが、それも彼女なりの気遣いなのだろうと頷く。
電話の相手は母だった。
『莉子ちゃんから聞いて…驚いたわ。すごく素敵なお嬢さんなんですって?』
まあ、近いうちに姉から連絡が行くだろうことは、何となく想像はしていたけれど。
「うん。紹介はそのうちしようと思っていたよ。莉子から石を貰っているし。」
『結婚も視野に入れているのね?』
「そうだね。僕にはもったいないような子だよ。」
『一度連れてこない?急だけれど、今日お父さんとお食事に行こうと思っていたから、ホテルのディナーを予約していたの。来てくれるなら、人数を増やすだけだから。』
駆琉は少し考える。
「待ってて、彼女にも聞いてみる。」
携帯を持って、バスルームに向かい、ドアをノックした。
「はいっ。」
中からは慌てたような声だ。
それを聞いて笑ってしまう。
「慌てないで。そのまま聞いて。家の親が、柚葉と食事をしたい、と言っているんだけど、構わないかな?」
しばらくして、そっとバスルームのドアが開いた。
「あの…、駆琉さんは?」
「俺は、この前柚葉のご両親に紹介してもらって、すごく嬉しかった。もちろん、うちの親にも紹介したい、と思うよ?柚葉が嫌でなければ。」
こくっ、と柚葉の喉が動くのが見える。
緊張したのだろう。
ゆっくり、柚葉は頷いた。
「駆琉さんさえ、よろしければ。」
「ディナーということだから、夜になると思う。では、OKで返事をするね。」
駆琉は柚葉の濡れた頭をポンポン、と撫でる。
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